ここまでの説明で、現在のプラス利子に立脚した通貨システムこそが持続可能なライフスタイルや経済活動にとって大きな障害になっていることがわかるだろう。ドイツ出身でアルゼンチンで財を成した実業家・経済学者のシルビオ・ゲゼル(1862-1930)は、その代表作「自然的経済秩序」でこの枠組みを変える方法を提示している。
彼の議論は、他の商品に比べてお金が有利な地位になるという事実から始まる。一般的に商品は時間の経過とともに減価し、たとえば昨日の新聞や去年の リンゴは売れないのに対し、お金の場合には損失を被ることなく好きなだけ保存することができ(インフレがなければの場合だが: この本が書かれたときにはドイツは金本位制だったことに留意されたい)、お金を必要としている人に融資するときに紙幣の所有者は複利を請求できる。この融 資では手持ち金が多ければそれだけ利益も多くなり、大富豪はこれにより利子だけで生活ができるようになるのに対し、多くの貧者は金持ちへの利払いを余儀な くされるのだ。
ではゲゼルの考え方とは?: 「お金の特権の廃止」である。経済的価値の保存の場合には商品よりも通貨が好まれるのはお金の価値が不変であるためなので、彼はお金の退蔵を防ぐために定 期的に「デマレージ(持ち越し費用)」を紙幣の所有者から徴収することを思いついたのだ(たとえば額面価格の100分の1のスタンプを毎月貼る: 詳細は次回)。
これにより金融システムが根本的に変わり、債務者に有利になる。資産を増やすよりもむしろデマレージによる貨幣価値の下落の回避の手段として債権者 は融資を行い、このデマレージの率が十分に高ければマイナス利子の融資も可能となる。たとえばデマレージが月1%(1年だと約11.4%)の場合、手許に 1000ドルを1年間置いておいて100ドル以上損するぐらいなら、950ドルしか戻ってこなくても貸したほうがましになるのだ。マイナス利子の結果、こ れまで低利回りのために融資を受けられなかった事業にもチャンスが回ってきて、融資=好きな事業を営む自由を受けられる人が増え、その結果経済運営がより 民主的になるのだ。
ゲゼル自身は自分の理論の応用例を目の当たりにすることなく1930年に没したが、その後の歴史が彼の正しさを証明している。次回は歴史的成功例について紹介したい。