Archive for 2006年5月

開かれた通貨宣言

5月 22, 2006

現在の社会の基盤として、民主主義や人権、自由などの概念がある。これらの価値を抑圧する人は国際社会から非難される危険を冒す一方で、NGOなどの擁護者は世界中から支援を得られる可能性がある。

開かれた通貨宣言は、現代社会の業績を経済分野に応用したものである。1948年に国連で採択された世界人権宣言からの引用に始まり、現在の通貨システムの正統性について疑問を投げかけている。

  • 非民主的な管理: お金は誰もが必要な道具であるが、現在このお金は民間銀行が管理しており、誰が融資を受けられ事業を始められるかは銀行次第である。
  • 高価: お金の借り手は元金に加え複利を負担する必要がある一方で、利益は限られた人間だけが掌中にする。
  • 退蔵可能: お金の所有者はお金を好きな期間退蔵ができるが、これによりお金の流通が阻害され、本当に必要な人が迷惑を受ける。
  • 不公平: 複利の存在により、大多数の貧しい人を犠牲にして豊かな人の資産が増えてゆく(詳細はケネディを参照)
  • 持続不可能: 永遠に指数関数的な成長を要求する現在の通貨システムは遅かれ早かれ破綻する運命にある

簡単にいうと、われわれの通貨システムは非民主的で、人権や自由を考慮していないわけだ。

通貨システムは自然法則ではなく合意事項であり、これは人間のニーズに合わせて作成され、今でも改編可能であることに留意されたい。われわれの交換手段がわれわれの価値のためになるようにするためには、通貨システムを改編する必要があるわけだ。

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ドイツのキームガウアー: 地域経済の自律性を取り戻す新通貨

5月 16, 2006

大多数の人を犠牲にして少数の人だけを豊かにするグローバル化によって数多くの対抗運動が出現してきたが、その中でも慧眼な人は別の通貨システムで現行の社会経済システムを根本的に変革できる可能性があることに気づいている。今回は前回紹介した1930年代の素晴らしい実験が行われた場所からそれほど遠くない小さな町の興味深い取り組みをご紹介したい。

ミュンヘンから80キロ東にあるプリーン・アム・キームゼーは、数多くの人がキーム湖で夏の休暇を過ごすバイエルンでも有数の行楽地だ。ゲゼルや ヴェルグルなどを学び、この地で高校教師をしていたクリスティアン・ゲレーリは、2002年の秋に地域通貨を運営するプログラムを考え付いた。6人の女子 生徒が参加に興味を示し、キームガウアーのプロジェクトが翌年1月に始まった。

このシステムはNPO・一般市民・地元企業の間で誰もが得する関係の構築を目的として計画された。それぞれが以下のようなメリットを享受し、この交換手段が地産地消を促進する。

* NPO: 100キームガウアー(=€100)を€97で仕入れ、一般市民に€100で販売するため、儲けとなる€3を自分たちの活動費に充当できる。
* 一般市民: €100で100キームガウアーを買い入れ、額面価格のままで地元商店に支払うため、追加支出なしで地元のNPOに消費額の3%を寄付できる。
* 地元企業: 受け取った100キームガウアーを他の地元企業への支払いに使うか、5%の手数料を負担して€95に両替する。5%の手数料は広告費とみなされ、これにより地域貢献を望む消費者をひきつけることができる。
* キームガウアー事務局: 100キームガウアーを€97で売り、€95で再交換する。差額の€2は運営費に充当される。

利用者やキームガウアーでの地元企業の売上額は右肩上がりを続けてきた。現在では700人の市民と380もの地元企業がこのシステムに参加し、年間で72万キームガウアーもの売上を記録している(詳細はこちらで)。ICカードの導入によりさらなる成長が期待されているこのシステムは、ドイツ国内外の注目を集めている。

オーストリアで地域経済を復活させた地域通貨

5月 9, 2006

ゲゼルの減価理論はたいてい、オーストリアのヴェルグルという町で大恐慌の時代に実践された成功例とともに語られる。今回はこのティロル地方の町で、この通貨システムがどのように地域経済の回復に一役買ったかを紹介したい。

この小さな町は当時、他の町同様不況に喘いでいた。1932年春にはわずか人口4216人の町で350人が失業しており、そのうち200人以上は失 業保険も切れていた。税収も減り、町役場も破産の危機にあった。そこで町長であったミヒャエル・ウンターグッゲンバーガーはこの苦境から脱出するために、 1932年7月に地域通貨として「労働証明書」の発行を決断した。

1・5・10シリングの労働証明書が印刷され、町役場から建設労働者に賃金として支払われた。各紙幣は月末になると有効期限を迎え、それを再度有効 にするには額面金額の100分の1のスタンプが必要であった。つまり、たとえば1000円の労働証明書を今日(5月9日)に受け取ったとすると、この紙幣 は5月31日までしか有効ではなく、今月中にこの紙幣を使いきれなかった場合には10円のスタンプを買って貼らなければならない。そのためこのお札を受け 取った人間はこのお札を手元に置いておくのではなく使うことを推奨され、これによりヴェルグルの経済活動が息を吹き返した。平均でわずか5490シリング の通貨供給で250万シリング以上の取引がわずか1年あまりの間に起こり、町役場はこのお札のおかげで公共事業に10万シリング以上支出ができるようにな り、また失業も4分の1減った。さらに税金の前払いを申し出る人さえ出るほど(いくら十分に収入があっても、あなたならそうするだろうか?)みんなが豊か になったのだ。

だが、この並行通貨のブームはウィーンの中央当局を震え上がらせ、ヴェルグルはこの素晴らしい通貨の流通を1933年9月に中止せざるを得なかった。とはいえこの成功はさまざまなメディアに取り上げられ、ゲゼルの理論の有効性を証明している。現在ではウンターグッゲンバーガー研究所が関連資料の収集の他、地元でのI-motionプロジェクトの推進を行っており、ドイツで”Regio”(地方通貨、次回紹介)の実践者の訪問を数多く受けている。

デマレージ(持ち越し費用)、あるいはマイナス利子とは?

5月 4, 2006

ここまでの説明で、現在のプラス利子に立脚した通貨システムこそが持続可能なライフスタイルや経済活動にとって大きな障害になっていることがわかるだろう。ドイツ出身でアルゼンチンで財を成した実業家・経済学者のシルビオ・ゲゼル(1862-1930)は、その代表作「自然的経済秩序」でこの枠組みを変える方法を提示している。

彼の議論は、他の商品に比べてお金が有利な地位になるという事実から始まる。一般的に商品は時間の経過とともに減価し、たとえば昨日の新聞や去年の リンゴは売れないのに対し、お金の場合には損失を被ることなく好きなだけ保存することができ(インフレがなければの場合だが: この本が書かれたときにはドイツは金本位制だったことに留意されたい)、お金を必要としている人に融資するときに紙幣の所有者は複利を請求できる。この融 資では手持ち金が多ければそれだけ利益も多くなり、大富豪はこれにより利子だけで生活ができるようになるのに対し、多くの貧者は金持ちへの利払いを余儀な くされるのだ。

ではゲゼルの考え方とは?: 「お金の特権の廃止」である。経済的価値の保存の場合には商品よりも通貨が好まれるのはお金の価値が不変であるためなので、彼はお金の退蔵を防ぐために定 期的に「デマレージ(持ち越し費用)」を紙幣の所有者から徴収することを思いついたのだ(たとえば額面価格の100分の1のスタンプを毎月貼る: 詳細は次回)。

これにより金融システムが根本的に変わり、債務者に有利になる。資産を増やすよりもむしろデマレージによる貨幣価値の下落の回避の手段として債権者 は融資を行い、このデマレージの率が十分に高ければマイナス利子の融資も可能となる。たとえばデマレージが月1%(1年だと約11.4%)の場合、手許に 1000ドルを1年間置いておいて100ドル以上損するぐらいなら、950ドルしか戻ってこなくても貸したほうがましになるのだ。マイナス利子の結果、こ れまで低利回りのために融資を受けられなかった事業にもチャンスが回ってきて、融資=好きな事業を営む自由を受けられる人が増え、その結果経済運営がより 民主的になるのだ。

ゲゼル自身は自分の理論の応用例を目の当たりにすることなく1930年に没したが、その後の歴史が彼の正しさを証明している。次回は歴史的成功例について紹介したい。

利率と長期的な事業

5月 1, 2006

現在の複利は前回の記事で書いた現象だけでなく、短期的な事業に資金を意図的に投入する一方で、長期的な事業がなかなか十分な融資を受けられなくなっている。この問題に取り組んでいるドイツ人研究者シュテファン・ブルンフーバーは、著書“Wie wir wirtschaften werden”(英語版は「Our Future Economy」という題名で刊行予定)でこの問題をわかりやすく説明している。

以下の2つの事業のうち1つに投資ができる場合、あなたはどちらに投資するだろうか。

a) 10年後に€100になる€10の松の木

b) 100年後に€1000になる€10のクヌギの木

ほとんどの人は気づいていないが、利率がここで決定的な影響を持つ。将来成長する資産は過去においては小さくなるため、プラス利率は将来の資産の評 価減と同義だ。利息が年5%だとすると、2006年現在の€1000は2016年の€1628.89(1000×1.05^10)と同価値になるが、逆に 言うと2016年に€1000になるものは2006年現在では€613.91(1000/1.05^10)まで減額してしまう。この観点では松の木の現在 価値は€61.39であるのに対し、クヌギの木はわずか€7.60(1000/1.05^100)でしかなく、誰もが松の木を植える一方でクヌギの木には 誰も関心を示さなくなる。

これにより、手っ取り早く利益が期待できる中国になぜ実業家が先を争うように工場を建設するかがわかる。植林や教育など長期的な事業はこの枠組みでは儲からないため、実業界が関心を持ってもらえる可能性は低い。

だが、利率さえ変わればこの枠組みが根本的に変わる。マイナス利子になれば、将来の資産の評価が減るどころか増えることになる。利率がマイナス5% の場合、松の木の現在価格は€ 61.39ではなく€162.89に、クヌギの木は€ 7.60ではなく€131,501.26になるのだ。これにより長期的な事業や安定して利益を出す事業が有利になり、資金提供を受けられる事業が増える。

しかし、どうやればマイナス利子が可能になるのか。次回はこの問題を取り扱いたい。