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WIR銀行: 中小企業を助けるスイスの実践例

6月 3, 2006

地域通貨などの取組は実業界とは関係ないと誤解している人がいるが、スイスで1934年に創設されたWIR銀行(ドイツ語・フランス語・イタリア語)は、WIR(ドイツ語で「私たち」の意味)と呼ばれる補完通貨で低利融資を提供することで中小企業を助けている。

この銀行が創設されたのは、まさにスイスが大恐慌の影響に苦しんでいる時期であった。ゲゼルの「自由貨幣」の理論を知っていた人たちが集まり決済組合を作ったが、これが後に協同組合銀行となる。スイスフラン(CHF)の流通が不十分だったことから、CHFではなくWIRが交換手段として使われた。WIR銀行は1948年にゲゼルが提唱した減価を注視したが、現在でもスイスの中小企業間での取引を手助けしている。

この銀行の会員になれるのは、基本的に中小企業だけだ。彼らはCHFと並行してCHFと同価のWIRを、他の会員企業との取引で使う(たとえばWIR30+CHF70)。また、WIR建てだとCHF建てよりも低利で融資を受けられるが、それはWIRはWIR銀行自らが創造できるのに対し、CHFの場合は公定歩合を負担しなければならないからだ。こうして、たとえば公定歩合が3%の場合、WIRでは2%、CHFでは5%の利率になるわけだ。

他にも、WIR銀行の会員になることで顧客が増えるというメリットもある。WIRは非会員(大企業や外国企業)には使えないため、WIR銀行の会員は他の企業を引きつけることができる。こうして自分たちの購買力が国境外へと流出することを防げるのだ。

ある調査(英語)によると、WIR銀行は景気変動を調節し、従来の経済を補完する役割があるという(次回紹介)。WIR銀行の会員は不況時にはWIRでの取引を増やす一方、好況時にはWIRでの取引を減らすため、不況をそれほど恐れる心配がなくなる。70年以上の歴史から学べることはたくさんあることだろう。

WIR銀行についての本(英語)