Archive for 2010年4月

社会的企業か連帯経済か?

4月 21, 2010

東アジアの連帯経済関係者を世界の他の地域の関係者と交流させようと私は努力しており、最近社会的企業に従事している人たちに何名か会ったが、そこで私は、連帯経済よりも社会的企業という表現のほうがこの地域(日本、韓国、台湾、香港、そして最近では中国大陸でも)ではよく知られていることに気がついた。これら2つの運動は類似の目的を追求しているように見えるが、この2つの概念の間に横たわる根本的な違いについて明らかにしたい。

社会的企業の最初の取り組みが英国で生まれ、その後特に他の英語圏諸国などに広がっていったという事実をぜひ思い出していただきたい。その一方で、「連帯経済」という単語は、フランスやイタリア、スペインやカナダ(特にケベック州)、中南米やセネガルなど、ラテン系言語が話される国で幅広く使われている。今やアジアではフランス語やスペイン語、そしてポルトガル語はほとんど使われていないことから、「連帯経済」という用語がこの大陸では知られないままになっていることは想像に難くない。

社会的企業の主要概念は、障害者向けの雇用創出や、通常の融資を受けられない貧しい地域に対するマイクロクレジットなど、社会あるいは環境保護を目的とした事業を起こすというものだが、これは必ずしも既存の資本主義に挑戦するものではない。このため社会的目的がある数多くの私有企業も社会的企業とみなされているが、これは連帯経済ではほぼあり得ないことだろう。HSBCがスポンサーとなっている社会的企業関係の会議について目にしたことがあるが、この多国籍金融機関が連帯経済と手を組んでいる姿は私には想像できない。もしかしたら彼らは、社会正義の達成よりも持続可能な資本主義の構築に関心があるのかもしれない。

その一方で連帯経済は、特に世界経済フォーラムの対抗フォーラムである世界社会フォーラムにおいて、新自由主義的なグローバル化への対案として推進されてきており、この従事者は資本主義はいかなるものであれ収奪的であるとみなす。このため労働者生産協同組合などの協同組合がこの連帯経済の主要な担い手となるが、もちろん社会的企業の中にもこのカテゴリに入るものもある。

これら2つの概念が異なった社会経済的な価値観に基づいていることから、これを生み出した文化背景そのものが違うことは単なる偶然ではないと私は思う。資本主義が英語圏諸国で最も発展したことについては疑う人はいないと思うが、社会的企業では資本主義の構造そのものは手をつけられないままであることから、社会的企業のほうが連帯経済よりもはるかに都合がよいと考える人がある程度いる一方で、ラテン系の情熱を持つ人たちはその資本主義の構造事態を疑問に付す。そしてこの意味ではアジアは非常にアングロサクソン化されており、資本主義の原則を守ろうとするエリート層にとっては社会的企業のほうが連帯経済に基づいた協同組合よりもはるかに御しやすいと感じるのである。

私の偏見かも知れないが、アジアではラテン世界よりも英語圏のほうが好まれる傾向にあることから、連帯経済を推進する上で私はこの大問題に直面している。アジアでパラダイム・シフトを起こすにはどうしたらよいのだろうか。

滋賀県、環境保護や雇用創出のために補完通貨の導入を検討

4月 19, 2010

2010年4月7日(水)に滋賀県大津市で、環境保護や将来的には雇用創出のために補完通貨システムを導入する可能性についての講演会が開催された。

滋賀県には日本最大の湖である琵琶湖が存在し、この琵琶湖は滋賀県民のみならず京都府民や大阪府民、さらには兵庫県民の水がめともなっている。琵琶湖の水質に対する懸念から滋賀県では環境運動が盛んで、2006年7月には環境派の嘉田由紀子知事が就任している。補完通貨の専門家であるベルナルド・リエター(Bernard Lietaer)氏が今回、同県に対するコンサル活動を行う目的でベルギーから日本に招聘され、月曜日に同知事と面会した際にリエター氏は、同県における環境政策の推進目的の補完通貨の概略を紹介した。

彼の講演は、工業化時代にデザインされた大規模システムが、ポスト工業化時代に入ったことにより危機に瀕しているという事実を示すことから始まり、一般的な思い込みとは裏腹に、通貨制度が「価値観に対して中立ではない」(つまり、ある価値観の実現を推進する一方で、他の価値観の推進はむしろ妨害する)ことや、特に現在の法定通貨が過度に陽的(男性的)であることから、陰的(女性的)価値観を推進するためには別の通貨が必要であることからわかるように、異なった社会や経済の目的を追求するのであればそれにふさわしい通貨制度が必要であることが示された。

リエター氏の提案は、滋賀県が抱えるさまざまな課題に対処するために、2種類の補完通貨を導入するというものである。まずは、欧州4都市(ブリストル(英国)、ブリュッセル(ベルギー)、リバプール(英国)、ルクセンブルク(ルクセンブルク))で導入が検討されている事例と同様に、「びわ」と呼ばれる新しい補完通貨でのみ支払い可能な環境税の導入である。これが実施されると滋賀県は、二酸化炭素の排出権の際のように、環境のためになるボランティア活動を実施することで納税額相当のびわを稼ぐか、あるいは誰かからびわを買い取ることで納税額相当のびわを手に入れることが必要になる。2つ目は、南米のブラジルやウルグアイで導入されている企業間通貨を導入することによって企業間取引を推進し、これによって雇用創出を推進するというものである。

会場からはびわに関する質問が集中したことから、滋賀県では補完通貨の社会経済的な側面よりも環境保護的な側面に対して注目されている一方で、悪化する一方の労働条件にはあまり関心が払われていないような印象を私は受けた。とはいえ、滋賀県には数万人のブラジル人が居住しており、日本の製造業の苦境により彼らが失業に苦しんでいる現状を考えると、雇用創出について滋賀県が真剣に対処するつもりであれば、ブラジルはフォルタレザ市で生まれ、雇用創出に大いに役に立っているパルマス銀行モデルの導入についても真剣に検討することが推奨される。

第1回連帯経済社会フォーラム報告

4月 18, 2010

第1回連帯経済社会フォーラムがブラジルはリオ・グランデ・ド・スール州のサンタ・マリア市で2010年1月22日から24日にかけて開催され、この新しい経済のさまざまな分野における達成事項が紹介されたり、克服すべき課題が明確化されたりした。数百名にのぼる参加者の大多数はブラジル各地および近隣諸国(特にアルゼンチンやウルグアイ)からの参加であったが、米国、カナダ、欧州およびアジア(私のみ)からの参加もあった。このイベントへの参加者の大多数は同州ポルト・アレグレ市やその近郊に移動し、そこで1月25日から29日にかけて開催された世界社会フォーラム10周年フォーラムで議論がさらに深められた。

1月22日(金)は、ポルト・アレグレで2001年1月に第1回世界社会フォーラムが開催されてからこれまでの経過を振り返った後、2つの全体会議(「ブラジル国内市場における連帯フェアトレードに関する全国セミナー」と「国際集会: 連帯経済と世界社会フォーラム-過去の回顧と将来展望」)が同時並行で開催された。私は国際集会のほうに参加したが、そこでは連帯経済に関して周辺国の参加者が、連帯経済部門でブラジルが達成した数々の業績(連帯経済局(SENAES)やブラジル連帯経済フォーラム(FBES)などの創設)を賞賛したり、連帯経済を国外にも広げるためにブラジルにさらにリーダーシップを発揮してくれと要請したりしており、またメルコスル(南米共同市場)加盟各国(アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ブラジル)内で関税政策を調整し、連帯経済の商品が国境を越えて取引しやすくなるようにすることの重要性が強調されたりした。

2日目(1月23日(土))は、5つの分野(「連帯金融」、「教育と文化」、「国際連帯統合」、「連帯生産/販売/消費」および「食糧・栄養主権」)で分科会が開催された。私は連帯金融分科会に参加したが、そこでは私自身を含む7名が発表した。アルゼンチンから来たREDLASESのエロイサ・プリマベーラ(Heloisa Primavera)女史は、現在の通貨制度では通貨供給量が不十分であることを指摘した上で、ブラジル中銀が地域通貨に対して技術的支援を開始していると述べた。彼女は連帯経済が依然として貧者の経済活動とみなされている現状を批判し、新たな開発モデルとして見直すことを提唱した。その後補完通貨研究所 JAPAN創設者として私が続き、現在の通貨が負債であるという特徴を持っている点や、地方自治体はおろか各国政府でさえ自らの交換手段=通貨を制御できない点、また複利によって指数関数的な成長が強要されている点や、貧しいから金持ちへと富が再配分されている点を指摘し、補完通貨の事例をいくつか紹介した。その後リオ・グランデ・ド・スル州連帯交換市ネットワーク(Rede Estadual de Trocas Solidárias)のパウロ・モレイラ(Paulo Moreira)氏が、ブラジルの法定通貨レアルではなく交換券を使って商品が交換される交換市の実践について簡潔に紹介した。

さらにプレゼンは続いた。リオ・グランデ・ド・スル州の州都ポルト・アレグレから参加した中南米労働者協同組合・互助組合連合(COLACOT、Confederação Latinoamericana de Cooperativas e Mutuais de Trabalhadores)のロジェリオ・ダロー(Rogério Dalló)事務局長は、ブラジルにおいて信用組合の預金額が全預金額の4%に過ぎないと語り、バーゼルII や国際決済銀行などが推し進める新自由主義的な政策を批判した上で、中南米でもドミニカ共和国やパラグアイなどはそのような新自由主義的な政策をそのまま導入していないことを指摘し、信用金庫をバーゼルIIの対象外にすることや連帯経済世界銀行の創設を提唱した。ブラジルはセアラ州の州都フォルタレザ市でパルマス銀行(http://www.bancopalmas.org.br/およびhttp://www.banquepalmas.fr/)を創設したジョアキン・メロ氏は、ブラジルに存在する膨大な貧困は、ブラジル人の半数が金融機関から排除されているという現実に起因すると語り、パルマス銀行などのコミュニティ銀行は「ネットワークを形成した連帯金融サービスで、提携やコミュニティをベースとしており、連帯経済に基づいた雇用や収入を生み出す目的で地域経済の再構成に専念する」ものであると語った。フランスでSOLプロジェクトと呼ばれる補完通貨を実践しているセリナ・ヴィタカー(Celina Whitaker)女史は、このプロジェクトが通貨について考え直そうという着想から発生したものであり、GDP以外の指標を基にした経済活動の推進を意図していると説明したあとで、連帯経済を社会運動の目的達成のための手段と規定し、この補完通貨の使用方法(連帯経済関係の商店におけるポイントカード、タイムバンクおよびボランティア向けポイント)を紹介した。そして最後にSENAESのアロルド・メンドンサ(Haroldo Mendonça)氏が、ブラジルでも開発が遅れている北東部への融資に特化した北東部銀行(Banco do Nordeste)の成功に加え、地域通貨を発行しているコミュニティ銀行に対する中央銀行の努力を紹介した。さらに、メキシコの全国協同組合連盟(Alianza Cooperativa Nacional)の社会運動を支援しようという提案も行われた。

1月24日(日)には、食糧・栄養主権、都市農業、国際統合、行政とNPOの協働、連帯教育と文化、連帯経済の社会主義的なアイデンティティ、民衆協同組合インキュベータ、連帯経済のためのソーシャルネットワークサイト(Cirandas)、原材料調達ルートの確保、若者の参加および新たな教育方法などさまざまなテーマで、20ものワークショップが開催された。午後には土曜日の議論の内容がまとめられ、連帯経済と世界社会フォーラムとの間でお互いのためになる交流が行われ、これにより各地の連帯経済の担い手が国や大陸を超えて連携できるようになったことや、公共政策の調整の必要性、実践例のマッピングの重要性、大企業が食糧の供給を制御している現状への抗議、種子銀行の創設、食糧に対する権利、都市と農村の連帯、南北間のみならず北北間や南南間でのフェアトレードの重要性や開発も出るのパラダイム・シフトなどが話題に上った。

議論自体は翌週もポルト・アレグレ都市圏で続けられ、各国(ケベック、パラグアイ、ブラジル、メキシコ)における公共政策の比較を行ったセミナーや、ウルグアイ・ブラジル・フランスおよびボリビアから5名が無償経済について語ったセミナーなどが行われた。ブラジルでは連帯経済は民主主義の伝統に基づいており、ルラ政権(2003~)のもとでSENAESやFBESの創設により強化された一方で、パラグアイでは連帯経済はまだまだ歴史が浅いことや、メキシコでは信用金庫を推進する法制度に向けた取り組みが行われていることが紹介された。無償経済については、現在の経済では重商原理主義が行き過ぎていることや、医療が公共財であることから無料であるべきだという議論が行われた。

合計8日にわたったこのフォーラムは、正直なところちょっと長過ぎたと私は思う。特に真夏の昼間に冷房もない場所で議論が行われたことから、参加者にとってかなり疲れるものであった。また、ポルト・アレグレ都市圏ではセミナーやワークショップが各地に分散する形で開催されたが、その距離もまた問題点だったと言える。外国からの来訪者の観点で言うと、設備の整った大学など建物内で会議が行われていればありがたかったと思う。

また、このフォーラムを改善する上でのもうひとつの課題は、中南米以外とネットワークを強化し、中南米外から参加者が来て交流できるような通訳サービスの提供である。アジアからの参加者が私だけで、中南米外からの参加者が私が思っていたよりもはるかに少ない(中南米以外からの参加者は10名未満)だったことは残念である。第2回連帯経済社会フォーラムが開催される場合には、中南米以外からの参加を増やし、この運動を全世界的なものへと進化させてゆくために、さらなる努力が必要となるだろう。

第9回ワーカーズ・コレクティブ・ジャパン全国大会報告

4月 16, 2010

第9回ワーカーズ・コレクティブ・ジャパン(WNJ)全国大会が2009年12月5日(土)および6日(日)に、さいたま市で開催された。全国各地から600名近い人たちがこの場所に駆け付けたが、そのほとんど(9割以上)が50代から60代の女性であり、全国各地に散らばっているため日頃は目にすることができない仲間に会って交流を行っていた。この報告書を作成する上で、WNJによるレジメが非常に役に立ったことから、その点でWNJには感謝の念をお伝えしたい。

ワーカーズ・コレクティブ・ジャパンは1993年より2年ごとに全国大会を開いており、県支部などがこれに参加している。日本初のワーカーズは1982年に神奈川県で生まれた「にんじん」であり、その後東京都や千葉県などでもワーカーズが設立された。これらの多くが、食や子育ておよび老人介護といった当時満たされていなかった社会的ニーズを満たすために、当時すでに日本各地に広がっていた消費者生協による取り組みとして生まれたことに留意することが非常に重要である。言い換えるなら、ワーカーズの大部分は既存の消費者生協と緊密な関係を持っており、これによるメリットおよびデメリットがあるが、それについては後述する。また、数十のワーカーズがある都道府県もあれば全くないところもあるなど、ワーカーズ運動の広がりには地域的にかなりバラつきがあるのも確かである。

会議は、土曜午後に同時に開催された分科会7つから始まった。第1分科会では、現在日本にワーカーズを律する法律がないことから、その立法について議論が行われた。2011年4月に施行される保険業法の改正により共済組合に悪影響が出ることから、それに関する対策が話し合われた。立教大学の藤井敦史先生は韓国の社会的企業育成法について発表を行い、この法律が労働組合と反貧困運動の成果であることを指摘した上で、社会的脆弱階層に対して雇用および/あるいは社会サービスを提供する企業であれば社会的企業とみなされ、税金の控除や補助金などのサポートが受けられることを紹介した上で、日本に向けた戦略を提唱した。その後大河原雅子参議院議員が、法律の制定に向けたプロセスの概要を紹介した。第2分科会ではワーカーズが提供する子育ておよび老人向けサービスが取り扱われ、4名の発表者が毎日の活動について発表し、それによる利用者の生活向上の様子を紹介した。

第3分科会は食関連のワーカーズに関するものであり、その厳しい現状が紹介された上で議論された。首都圏では63のワーカーズのうち28が赤字経営となっているが、発表者は神奈川県が他都県と比べて業績が好調であることに着目し、その理由として老人介護などの分野で生活クラブ生協と食関連ワーカーズとの緊密な関係によって経営が好調であるのではないかという推論を述べた。弁当の多くは500円を超える値段であるが、現在のデフレ下にある日本では他の店が200円からという非常に安い価格で弁当を販売している現状を踏まえると、これらワーカーズの意義を理解している消費者でも経済的なオプションを選択してしまうことを忘れてはならない。

第4分科会はワーカーズの経営に関するものであり、老人介護、子育て支援、食関連などにおいて5つの成功例が紹介された。千葉県佐倉市の素晴らしい事例では、使用済食用油の回収やリサイクル、有機食品や弁当の販売など多角経営を行い、経験により時給1,000~1,300円を会員に支払っており、販売の停滞時にはチラシを近所に配っている。第5分科会では子育て支援について取り扱われ、地域社会におけるハブとしての子育て支援センターの意義や、労働集約型サービスであることからの高コスト問題が話題になった。

第6分科会では、消費者生協とワーカーズの緊密な連携による地域社会の創造が取り扱われた。神奈川県のある事例では、広告網や自主管理経営の経験など消費者生協の既存の資源をフルに活用し、高齢者介護における市民参加を推進している。別の発表者は、別の消費者生協とワーカーズとの合弁事業として福岡に設立された社会福祉法人について紹介した。第7分科会では地域社会で誰もが働く可能性が模索され、皿洗いサービスやパン屋、弁当サービスなど、引きこもりの若者や障害者など、ワーカーズに参加する前に社会的疎外に苦しんだ人たちに雇用を生み出している事例が紹介された。

日曜日の午前は、埼玉県副知事などによるあいさつから始まり、その後都市農業サポートから子育て支援や弁当サービスなど、新規ワーカーズ6つの原案発表が行われた。WNJは今回初めて、ワーカーズという概念を広く伝える目的で、外部の若者にこのような事例発表を依頼しており、参加者は原案の実現性を分析するというよりも、そのユニークさを楽しんでいた(大学生のプロジェクトの中では、教授の懐を大いにあてにしていたものもあった)。午後にはワーカーズ製品の販売や食関連の問題、NPOバンクや若者関連の問題などで9つのワークショップが開催された。

今回の全国会議は、私にとって日本のワーカーズの実践例を知る事実上初めての機会であり、その功績および課題を伺い知ることができた。ワーカーズと消費者生協との間での強いつながりは、食関連のワーカーズにおいて他の連帯経済の担い手から有機食品などを手に入れることができるという点で有益だが、それによって原材料が高くなり事業の採算性が下がるという点も挙げられる。このように高い原材料ではなく、通常の流通網から別の材料を手に入れることができればコストパフォーマンスも改善するだろうが、消費者生協の精神を他の社会経済分野にも広める方法としてワーカーズが構想されていることから、実際に別の流通網に移行するようなことはないだろう。

また、ワーカーズで働く人の多くが最低賃金未満しか得られておらず、そのことから生活するには他の収入源(夫の収入あるいは年金)を持つ必要がある点も忘れてはならない。この事実により、ワーカーズがあまり稼ぎを心配しなくてよい中流から上流の主婦や年金生活者のみのためのものであるという誤解が起こる可能性があり、男性が家族を養えるような雇用を生み出すためには別のビジネスモデルを生み出すことが早急に求められている。この点では、社会的企業に関する韓国の法律の達成事項を研究した上で、その中でどの要素を日本の法制度に適用するのかを見極めたり、ヨーロッパや中南米など別の大陸にあるワーカーズとの交流を促進したりすることが非常に有益であろう。

第2回アジア連帯経済フォーラム

4月 15, 2010

第2回アジア連帯経済フォーラムが、2009年11月7日(土)と8日(日)に東京都内の国連大学、青山学院大学およびウィメンズ・プラザで開催された。11ヶ国から約320名がこの国際イベントに参加し、日本、アジア各国およびそれ以外の世界における連帯経済の理論的基盤や実践例を学んだ。さらに、10を超えるNGOがブースで製品や実践活動を紹介し、訪問者に対して連帯経済の幅広い活動を紹介した。

この会議は、PARC (アジア太平洋資料センター)の創設者の一人である北沢洋子女史のイントロスピーチから始まり、そこで彼女はアジアにおいて「連帯経済」という用語がほとんど使われていないことを認めた上で、欧州における連帯経済の歴史的発展の経過に加え、この運動を推進してきた主要なグローバルネットワークとしてRIPESSやAlliance 21内のWSSEについて紹介した。その後FPH財団のピエール・カラム(Pierre Calame)氏によるビデオ講演が行われ、そこで彼は今や使い古されている「21世紀はアジアの時代」という表現が連帯経済にもあてはまると語り、「テリトリー」(日本語にするなら「地域」。フランス語圏の人はこの用語を好んだが、英語圏の人は「コミュニティ」という表現のほうがよいと考える傾向にある)が自分たちの通貨やエネルギー源を管理できるように私たちの経済を変革し、地域の労働力を社会統合のために使い、より自給自足可能な地域づくりを目指すべきだと主張した。

セッション1は世界における連帯経済の展望についてであり、発表者3名がその展望を共有した(他にもブラジルからの参加者が予定されていたが、急病のために急遽欠席した)。まずカナダ・ケベック州からヴァンサン・ダジュネー(Vincent Dagenais)氏が、融資を受けられない貧しい人たちが受ける社会的疎外、市民参加型の地域運営の必要性および食料主権という3つの主要課題を話題にし、グローバル化により人々が疎外(exclude)されるのに対し連帯経済は人々を包摂(include)すると結論付けた。次にフランスのマルテーヌ・テヴニオー(Martine Theveniaut)女史とカナダのイヴォン・ポワリエ(Yvon Poirier)氏が、「パクト・ロコー」(”Pactes Locaux”、訳すと「地域合意」)と呼ばれる、地域ベースの活動(環境、社会、文化、金融およびガバナンス)を世界的にリンクする取り組みを紹介した。3番目に話したジョブ・オーストラリアのデヴィッド・トンプソン(David Thompson)氏は、同国では貪欲に利益を追求する主流経済と公共の利益を追求するもう一つの経済が存在すると指摘し、気候変動やピークオイル(原油の生産量が今後減るという見通し)、また食糧危機などといった今日の深刻な問題により、さらなる変革が生まれることを希望した。

セッション2ではアジアに焦点が当てられ、5ヶ国から6名が発表を行った。まず、2007年10月にフィリピン・マニラで第1回アジア連帯経済フォーラムを開催したベンジャミン・キニョネス(Benjamin Quiñones)氏が、社会や環境に対して責任を持つ同国の中小企業によるネットワークCSRSMEについて紹介し、このネットワークの中での原料供給や企業活動の改善が課題であると語った。次にマレーシア・バイナリー大学のデニソン・ジャヤスリア(Denison Jayasooria)氏が、経済発展を遂げたものの貧富の差や都市と農村における開発の差が未だ大きい同国の現状を簡単に紹介した後に、むしろこの現状を克服すべくマイクロクレジットや生産協同組合(ワーカーズ・コレクティブ)など新たな実践例が生まれているきっかけになっていると肯定的なコメントを行った。そして実践例として、マレーシア全国の42地域でITハブセンターを築き、特に各地域の女性がこのインターネットを活用して商品やサービスの販売を改善できるようにしているショーン・イサック(Shaun Isaac)氏の取り組みが紹介された。その後インドにある自営女性連合(SEWA)のイラ・シャー(Ira Shah)女史が、マイクロクレジットの実践例や、インド国内のみならずアフガニスタンを含む周辺諸国に広がった女性のネットワークについて説明した。

4番目に韓国の社会投資支援財団のチャン・ウォンボン(장원봉)氏が、同国における社会的企業および自立支援センターの現状について話した。現在韓国には、労働部(日本風にいうなら労働省)が認定した社会的企業が251社あり、これらは雇用創出あるいは社会サービスの提供(その両方の場合もあり)を主要目標としており、社会的弱者や高齢者、および障害者に対して活動を行っている。また、自立支援センターは242ヶ所あり、2967の事例により2万6691名に雇用が生み出されている。最後に日本の早稲田大学の西川潤氏が日本経済の構造について話を行い、日本では政治家など従来型のエリートが、農協や消費者生協などの非営利セクターに対し、支援というよりも支配を行ってきたが、1990年代より新たな形の非営利活動が生まれていると説明した。

セッション3では連帯金融が取り扱われ、4名が発表を行った。まず国際労働機関のバーント・バルケンホール(Bernd Balkenhol)氏が、連帯金融の概要や従来型の金融との違いを紹介し、利益のみならず環境や社会面での価値も追求するのが連帯金融だと述べた。次にINAISEのヴィヴィアンヌ・ヴァンドムルブルック女史がその組織や、オランダのトリオドス銀行やアイルランドのクラン・クレド、そしてフランスのLa NEFなど同組織の会員団体の活動を紹介した。3番目に、米国ワシントンDCに本拠を置くNGOであるMIXのミコル・ピステッリ(Micol Pistelli)女史が、世界各地のマイクロクレジットの業績分析について説明した。最後に日本から、大和総研の河口真理子女史が同国における社会的金融の現状を説明し、従来型の金融機関が提供する社会的金融サービスを非営利部門ももっと利用すべきだと提案した。

セッション4では、社会的企業の果たす役割が取り上げられた。セッション2でも登場したベンジャミン・キニョネス氏は、職人グループや連帯観光、安価な住宅や健康によいコーヒー、葬儀サービスや有機緑茶など、タイ、マレーシア、インドネシアおよびフィリピンで実施されているさまざまな社会的企業や生産協同組合の実例を紹介した。次にワーカーズ・コレクティブ・ネットワーク・ジャパンの藤木千草女史が、食事サービス(レストランやお弁当)、パン屋、ジャム、カフェ、保育園および高齢者向け交通サービスなど日本における多様な事例を紹介した。3番目に、韓国・共に働く財団のハ・ジョンウン(하정은)女史が、同国における悲惨な労働条件に苦しむ貧窮層によりよい就労機会を提供するために社会的企業が生まれたと説明し、法制度を通じて政府が最大2年間、社会的企業と認定された企業に補助金を出すと話した。最後に日本・聖学院大学の大高研道氏が日本における連帯経済の課題について述べ、社会的疎外の実例をいくつか示した後で既存の連帯経済の担い手が社会的・地域的な包摂も行うべきだと提案した。

日曜の午前には、「社会的金融」、「フェアトレード」、「高齢者介護と医療」、「自給自足的なコミュニティ」および「国際連帯税」という5つのテーマでワークショップが開催された。その後セッション5では連帯経済の達成度に関する指標や測定方法について議論が行われた。まず、セッション3でも発表を行ったミコル・ピステッリ女史が、自らが所属するMIXというNGOが用いている評価手法の詳細を説明した。その後フィリピンのASKIという団体のローランド・ヴィクトリア(Rolando Victoria)氏が、A-という最終評価を得た評価について語った。最後にパリから来たエディス・シズー(Edith Sizoo)女史が、人間の責任憲章の意義について説明した。最後のセッションではこのフォーラムのコンセンサス文書の編集作業が行われ、最終文書は間もなく公開されることになっている。第3回アジア連帯経済フォーラムは、2011年にマレーシアで開催予定である。

今回の会議についてであるが、日本においては連帯経済の担い手の多くが中流の上の人たちで占められており、特に有機食品や高齢者介護といったニーズの充足に対する関心は高いものの、雇用創出や貧困撲滅といった課題は顧客満足度よりも重要度が低い点が感じられた。しかしながら日本も、高齢化に加え政府部門の債務増大、また中産階級の解体など社会や経済の構造面で劇的な変化を迎えており、連帯経済として現状に本当に苦しんでいる人たちに代替案を提示したいのであれば、日本においても連帯経済運動全体としてこれら傾向にもっと配慮することが不可欠であろう。

ブログ再開

4月 14, 2010

まず、2年半もの間このブログを放置状態にしてしまっていたことをお詫びしたいと思う。

ブログの更新をやめてしまった理由の一つに、6ヶ国語でコンテンツを準備する手間というのが挙げられる。これまでの反応などを考えてると、ドイツ語 やフランス語でブログを書くのをやめて、より反応の多いバージョンに集中したほうがよさそうだという結論に達した。このため今後は、英語・韓国語・スペイ ン語・日本語(五十音順)の4ヶ国語でブログを書いてゆくことにしたい。

最近かなり面白いニュースなどもなるので、できるだけ早く更新したいと思う。乞うご期待。

Miguel Yasuyuki Hirota

「経済の民主化に向けて」ブログ作者