第2回アジア連帯経済フォーラム

第2回アジア連帯経済フォーラムが、2009年11月7日(土)と8日(日)に東京都内の国連大学、青山学院大学およびウィメンズ・プラザで開催された。11ヶ国から約320名がこの国際イベントに参加し、日本、アジア各国およびそれ以外の世界における連帯経済の理論的基盤や実践例を学んだ。さらに、10を超えるNGOがブースで製品や実践活動を紹介し、訪問者に対して連帯経済の幅広い活動を紹介した。

この会議は、PARC (アジア太平洋資料センター)の創設者の一人である北沢洋子女史のイントロスピーチから始まり、そこで彼女はアジアにおいて「連帯経済」という用語がほとんど使われていないことを認めた上で、欧州における連帯経済の歴史的発展の経過に加え、この運動を推進してきた主要なグローバルネットワークとしてRIPESSやAlliance 21内のWSSEについて紹介した。その後FPH財団のピエール・カラム(Pierre Calame)氏によるビデオ講演が行われ、そこで彼は今や使い古されている「21世紀はアジアの時代」という表現が連帯経済にもあてはまると語り、「テリトリー」(日本語にするなら「地域」。フランス語圏の人はこの用語を好んだが、英語圏の人は「コミュニティ」という表現のほうがよいと考える傾向にある)が自分たちの通貨やエネルギー源を管理できるように私たちの経済を変革し、地域の労働力を社会統合のために使い、より自給自足可能な地域づくりを目指すべきだと主張した。

セッション1は世界における連帯経済の展望についてであり、発表者3名がその展望を共有した(他にもブラジルからの参加者が予定されていたが、急病のために急遽欠席した)。まずカナダ・ケベック州からヴァンサン・ダジュネー(Vincent Dagenais)氏が、融資を受けられない貧しい人たちが受ける社会的疎外、市民参加型の地域運営の必要性および食料主権という3つの主要課題を話題にし、グローバル化により人々が疎外(exclude)されるのに対し連帯経済は人々を包摂(include)すると結論付けた。次にフランスのマルテーヌ・テヴニオー(Martine Theveniaut)女史とカナダのイヴォン・ポワリエ(Yvon Poirier)氏が、「パクト・ロコー」(”Pactes Locaux”、訳すと「地域合意」)と呼ばれる、地域ベースの活動(環境、社会、文化、金融およびガバナンス)を世界的にリンクする取り組みを紹介した。3番目に話したジョブ・オーストラリアのデヴィッド・トンプソン(David Thompson)氏は、同国では貪欲に利益を追求する主流経済と公共の利益を追求するもう一つの経済が存在すると指摘し、気候変動やピークオイル(原油の生産量が今後減るという見通し)、また食糧危機などといった今日の深刻な問題により、さらなる変革が生まれることを希望した。

セッション2ではアジアに焦点が当てられ、5ヶ国から6名が発表を行った。まず、2007年10月にフィリピン・マニラで第1回アジア連帯経済フォーラムを開催したベンジャミン・キニョネス(Benjamin Quiñones)氏が、社会や環境に対して責任を持つ同国の中小企業によるネットワークCSRSMEについて紹介し、このネットワークの中での原料供給や企業活動の改善が課題であると語った。次にマレーシア・バイナリー大学のデニソン・ジャヤスリア(Denison Jayasooria)氏が、経済発展を遂げたものの貧富の差や都市と農村における開発の差が未だ大きい同国の現状を簡単に紹介した後に、むしろこの現状を克服すべくマイクロクレジットや生産協同組合(ワーカーズ・コレクティブ)など新たな実践例が生まれているきっかけになっていると肯定的なコメントを行った。そして実践例として、マレーシア全国の42地域でITハブセンターを築き、特に各地域の女性がこのインターネットを活用して商品やサービスの販売を改善できるようにしているショーン・イサック(Shaun Isaac)氏の取り組みが紹介された。その後インドにある自営女性連合(SEWA)のイラ・シャー(Ira Shah)女史が、マイクロクレジットの実践例や、インド国内のみならずアフガニスタンを含む周辺諸国に広がった女性のネットワークについて説明した。

4番目に韓国の社会投資支援財団のチャン・ウォンボン(장원봉)氏が、同国における社会的企業および自立支援センターの現状について話した。現在韓国には、労働部(日本風にいうなら労働省)が認定した社会的企業が251社あり、これらは雇用創出あるいは社会サービスの提供(その両方の場合もあり)を主要目標としており、社会的弱者や高齢者、および障害者に対して活動を行っている。また、自立支援センターは242ヶ所あり、2967の事例により2万6691名に雇用が生み出されている。最後に日本の早稲田大学の西川潤氏が日本経済の構造について話を行い、日本では政治家など従来型のエリートが、農協や消費者生協などの非営利セクターに対し、支援というよりも支配を行ってきたが、1990年代より新たな形の非営利活動が生まれていると説明した。

セッション3では連帯金融が取り扱われ、4名が発表を行った。まず国際労働機関のバーント・バルケンホール(Bernd Balkenhol)氏が、連帯金融の概要や従来型の金融との違いを紹介し、利益のみならず環境や社会面での価値も追求するのが連帯金融だと述べた。次にINAISEのヴィヴィアンヌ・ヴァンドムルブルック女史がその組織や、オランダのトリオドス銀行やアイルランドのクラン・クレド、そしてフランスのLa NEFなど同組織の会員団体の活動を紹介した。3番目に、米国ワシントンDCに本拠を置くNGOであるMIXのミコル・ピステッリ(Micol Pistelli)女史が、世界各地のマイクロクレジットの業績分析について説明した。最後に日本から、大和総研の河口真理子女史が同国における社会的金融の現状を説明し、従来型の金融機関が提供する社会的金融サービスを非営利部門ももっと利用すべきだと提案した。

セッション4では、社会的企業の果たす役割が取り上げられた。セッション2でも登場したベンジャミン・キニョネス氏は、職人グループや連帯観光、安価な住宅や健康によいコーヒー、葬儀サービスや有機緑茶など、タイ、マレーシア、インドネシアおよびフィリピンで実施されているさまざまな社会的企業や生産協同組合の実例を紹介した。次にワーカーズ・コレクティブ・ネットワーク・ジャパンの藤木千草女史が、食事サービス(レストランやお弁当)、パン屋、ジャム、カフェ、保育園および高齢者向け交通サービスなど日本における多様な事例を紹介した。3番目に、韓国・共に働く財団のハ・ジョンウン(하정은)女史が、同国における悲惨な労働条件に苦しむ貧窮層によりよい就労機会を提供するために社会的企業が生まれたと説明し、法制度を通じて政府が最大2年間、社会的企業と認定された企業に補助金を出すと話した。最後に日本・聖学院大学の大高研道氏が日本における連帯経済の課題について述べ、社会的疎外の実例をいくつか示した後で既存の連帯経済の担い手が社会的・地域的な包摂も行うべきだと提案した。

日曜の午前には、「社会的金融」、「フェアトレード」、「高齢者介護と医療」、「自給自足的なコミュニティ」および「国際連帯税」という5つのテーマでワークショップが開催された。その後セッション5では連帯経済の達成度に関する指標や測定方法について議論が行われた。まず、セッション3でも発表を行ったミコル・ピステッリ女史が、自らが所属するMIXというNGOが用いている評価手法の詳細を説明した。その後フィリピンのASKIという団体のローランド・ヴィクトリア(Rolando Victoria)氏が、A-という最終評価を得た評価について語った。最後にパリから来たエディス・シズー(Edith Sizoo)女史が、人間の責任憲章の意義について説明した。最後のセッションではこのフォーラムのコンセンサス文書の編集作業が行われ、最終文書は間もなく公開されることになっている。第3回アジア連帯経済フォーラムは、2011年にマレーシアで開催予定である。

今回の会議についてであるが、日本においては連帯経済の担い手の多くが中流の上の人たちで占められており、特に有機食品や高齢者介護といったニーズの充足に対する関心は高いものの、雇用創出や貧困撲滅といった課題は顧客満足度よりも重要度が低い点が感じられた。しかしながら日本も、高齢化に加え政府部門の債務増大、また中産階級の解体など社会や経済の構造面で劇的な変化を迎えており、連帯経済として現状に本当に苦しんでいる人たちに代替案を提示したいのであれば、日本においても連帯経済運動全体としてこれら傾向にもっと配慮することが不可欠であろう。

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