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アジア連帯経済フォーラム2012@インドネシア・マナド市

10月 7, 2012

アジア連帯経済フォーラム2012が10月1日(月)から3日(水)にかけて、インドネシア・北スラウェシ州マナド市にあるサム・ラトゥランギ大学の国際ビジネス経営学院(IBA)で開催された。17カ国(欧州5カ国およびカナダを含む)から数百名がこのイベントに参加し、アジア各地で生まれているさまざまな経験を共有および学習した。

初日(10月1日(月))は、北スラウェシ州のシニョ・ハリー・サルンダジャン州知事のメッセージを含む開会式から始まった。その後インドネシア人研究者4名が、コンラート・アデナウアー財団の招聘によりドイツを訪れ、同国での社会的市場経済の実践について学んだ内容を報告した後、Bina Swadaya(インドネシア)のバンバン・イスマワン氏が連帯経済に関する展望を発表した。彼はベンジャミン・キニョネス(ASEC会長、詳細は後述)による連帯経済の定義、すなわち“社会的企業により推進される経済”について言及し、彼による3P(「人々、地球および利益」、People, Planet and Profit)を紹介し、インドネシア企業のうち99.2%が中小企業であることを強調した。また、連帯経済について“経済活動を行っているが貧しい人たち,”のためのものであるとして、高齢者や若年層、あるいは最貧層や通常の中小企業を運営可能な層を除外した。中小企業の設立を実現する上でのマイクロクレジットの重要性を強調した後、コミュニティ組織の最善形態は“活発な会員活動”、“選出されたリーダー”、”経済的 + (社会的・教育的)” 活動および“民主的参加”を伴った自主運営組織だと説明した。このような組織は“相互学習および教育、問題の特定、意思決定、資源の活用および第3者との対話における装置”であると語り、その特徴を “収入創出への目標設定”, “開かれた気持ち”および“民主的”であると指摘した。

続いて、アジア連帯経済評議会(ASEC)のベンジャミン・キニョネス理事長が登場し、社会的連帯経済に関する彼の定義についてさらなる情報提供を行った。この部門を公共部門と民間部門のどちらにも属さないものとして定義した後、 “所有および資源管理への人々の参加”および事業の共同所有者としての“利益の共有”を強調した。彼は“連帯”、“相互依存”および“人間関係の構築” を“啓発的価値観”と特定し、ガバナンス、倫理的価値観、提供される社会開発サービス、環境保護措置および持続可能性の観点から社会的連帯経済を評価する枠組みを提示した。ウタラ大学(マレーシア)のダト・モハマド・ユソフ・カシム教授が協同組合の重要性を強調した後、ケバンサン大学(マレーシア)のデニソン・ジャヤスリア教授は、企業の社会的責任(CSR)同様に協同組合やマイクロクレジットが、市民社会において持続可能な開発を達成する上でのカギとなると語った。

午後にはワークショップが5つ(経済的安全、社会的に責任のあるガバナンス、社会福祉の拡張、健康な環境および価値の啓発)開催され、その後サム・ラトゥランギ大学のパウルス・キンダンゲン教授が、資本主義が多くの人を疎外していることと、貧しい人たちをエンパワーすることの重要性を強調し、連帯経済を “資本主義の不公正な経済慣行からの出口”と定義する一方、資本主義を廃止するのではなくそれとの共存を目指していた。 彼はインドネシア憲法の第33条に言及し、協同組合の役割が“インドネシアにおける経済的民主主義の創造あるいは創設において重要な機関”と規定されていると述べ、“ゴトン・ロヨン”あるいは “マパルス”(日本語の「もやい」に相当)という単語を紹介し、政治的干渉については“共同組合が失敗した理由の一つ”と批判した。インドネシア銀行(同国の中央銀行)のスハエディ氏は金融的包摂をインドネシア経済における最大の課題のうちの一つであると語り、ヴィヴィ・ジョージ女史は女性の生産活動におけるマイクロクレジットの経験を共有した。

2日目(10月2日木曜日)は、2万名近い人の命を奪った2011年の東日本大震災の津波により壊滅的な被害を受けた沿岸地域における地域再生という困難な業務について、PARCICジャパンの井上礼子女史が行った発表から始まった。彼女はソーシャル・キャピタル、市場および経営管理スキルこそが、連帯経済の発展において最も必要とされる要素であると強調した。南スラウェシ州マカサル市はハサヌディン大学のウィム・ポリ教授は、連帯経済を築く上で同情を超える必要があることを述べた。そしてフィリピンの持続可能社会財団のジェイ・ラクサマナ氏は、フィリピンとスイスの両政府間で合意された債務を開発資金に充当するスワップの結果創設された同財団について語り、社会的企業の創設および地域経済の発展への同財団の取り組みについて語った。そしてケーススタディとして、中部ジャワ州のプヌル流域における農業を推進する取り組みについてアリ・プリマトロ氏が語り、3つの達成事項(自助グループの推進、事業開発サービスおよび市場とのつながり)を説明した。ギアン・マンサ氏は、竹の手工芸品についての体験を語った。そしてフィリピンはオン・イーグルズ・ウィング財団のジャン・マリー・ベルナルド女史は社会的連帯経済の5つの柱、すなわち“社会的使命に根ざした、あるいは社会的に責任のあるガバナンス”、“価値観の啓発”、“社会的開発業務”、“環境保護”および“持続可能性”をフリー・レンジ・チキン・サプライチェーンに適用する方法について語った。

そして金融に関するセッションが始まった。シンガポールにあるImpact Investment Exchange Asiaのマグヌス・ヤング氏は、アジアにおける社会的投資の機会について説明し、その後補完通貨についての専門家廣田裕之社会的補完通貨についての説明を行った。その後ケーススタディが3つ発表された: インドネシアのネガラ銀行PNPMがインドネシア語で発表を行い、フィリピンにあるコメとタマネギのサプライチェーンAPPENDが、より良好な条件で農家への融資状況が改善した話を行った。午後にはASEF市場が開催され、バイオエタノール、家屋、手芸品や観光業などさまざまな業種が紹介され、その後ラチマット・モコドンガン氏が北スラウェシ州における有機米の農業を、ピット・ヘイン・プスン氏がManadokotaと呼ばれるマナド市内のITセンターを紹介し、両方の場合でも マパルスの重要性が強調された。最後にシグマ・グローバルのハサン・チャンドラ氏が実業家の立場から、融資を得る困難性について話を行った。

最終日(10月3日(水))は、連帯経済の概念に関する発表3つから始まった。サム・ラトゥランギ大学のヘルマン・カラモイおよびジュリー・ソンダク両教授は、“非営利団体の一つ”、“主にチャリティの基金およびボランティアを通じて商品およびサービスを提供する非営利団体の一部” (Kam, 2010)および“利益あるいは社会への価値を提供および改善する上でビジネスの手法および慣行を適用する組織”という社会的企業の定義を紹介し、これらをチャリティと伝統的な企業の中間に位置づけ、社会的企業の説明責任の重要性を強調した。CCEDNETのイヴォン・ポワリエは、社会的経済、社会的企業や第3セクター(日本語の第3セクターとは違い、英語の第3セクターは非営利セクターの意味)など連帯経済関連で似てはいるものの異なる概念を説明し、世界各地にあるさまざまな概念は強みである一方、これらの努力を統合することは大きな課題であると語った。ブリティッシュ・カウンシルのキム・ショミ(韓国)は、社会変革に若者を巻き込むプロジェクトであるグローバル・チェンジメーカーについて語った。そしてサム・ラトゥランギ大学国際ビジネス経営学院の教員が、教育経験および別のコミュニティ研修センターILMUについて話した。

そして最後の全体会では、発表が4つ行われた。AKSI-UI財団(インドネシア)のベニート・ロプララン氏とデウィ・フタバラト女史は、インドネシア人がマレーシア人あるいは東ティモール人と協力している事例を紹介した。Ekovivo(フランス)のオリヴィエ・アンドラン氏およびフロランス・ヴァル女史は、ウェブ上での視覚性を高めることにより社会的企業が融資を受けやすくするプロジェクトを紹介した。リカルト・B・アベフエラ氏およびモニック・センケイ女史は、インドネシアとフィリピンとの国境地帯の島に適用されている合意が、今となっては両国間の貿易を妨げ、連帯経済の推進においても障害となっていることを指摘した。そして最後にサム・ラトゥランギ大学国際ビジネス経営学院のイヴァナ・テー女史が、アジアにおける連帯経済の活動家が生産した商品を販売するポータルサイトとしてのwww.asefonlinemall.comを紹介した。そして閉会式では、素晴らしい社会的企業のプロジェクトを提出した学生に対して賞が授与された。

このフォーラムがビジネススクールによって開催されたことは、メリットもデメリットもあったといえる。メリットとしてはビジネス管理やマーケティングなどのスキルにおける専門知識を強調したい。また、インドネシアでは英語は公用語になっていないことを考えると、同学院の学生の流暢な英語力は評価に値するといえよう。

しかし同時に、このフォーラムではアジア、特に開催国インドネシアにおける連帯経済の将来に対していくつかの課題も提示された。まず、このフォーラムでは社会的企業が中心に据えられ、協同組合運動や自主運営、およびこれら企業と社会的運動との関連に対して十分に脚光が当てられているとは言えなかった。中南米の事例を知る筆者の観点からすると、連帯経済、特に貧困削減における中間層の役割は、中間層自身が社会的企業を作るというよりも、貧困層が自分たちの協同組合を設立できるよう支援することであるが、アジアと中南米の歴史的背景が完全に異なり、かつてのチャリティプロジェクトから社会的企業が発展してきた事実を鑑みると、少なくてもアジア各国での業績全てに対してきちんとした敬意を払う必要がある。

もう一点、会議中インドネシア語がそれほど使われなかったことにより、一般インドネシア人がこの貴重な会議に参加できなかったことも残念な点として指摘しておきたい。連帯経済は普通の人たちのためのものである以上、一般民が理解できる形で会議を行い、具体的には英語とインドネシア語との同時通訳が提供されていれば理解に役立ったことだろう。

社会的経済法に関する連続講演会(スペイン・バレンシア市)

10月 7, 2011

社会的経済法に関する連続講演会が、スペイン・バレンシア市のカハ・ルラル(農村金庫)の会議室で2011年10月6日に開催され、同年3月に可決された同法の重要性についての評価が行われた。スペイン経済の中で重要な役割を果たす同部門について、3名が連続して発表を行った。同法の主要部分の邦訳はhttp://ecosoljp.wordpress.com/2011/04/27/%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%82%A4%E3%83%B3%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E7%9A%84%E7%B5%8C%E6%B8%88%E6%B3%95%E3%81%AE%E6%9D%A1%E6%96%87/ で、および全文はhttp://www.boe.es/boe/dias/2011/03/30/pdfs/BOE-A-2011-5708.pdf (スペイン語)あるいはhttp://www.socialeconomy.eu.org/IMG/pdf/LEY_E_SOCIAL_TRADUCCION_INGLES.pdf (英語)で読むことができる。

最初に発表したスペイン社会的経済企業連合会(CEPES, Confederación Empresarial Española de la Economía Social)のカルメン・コモス(Dr. Carmen Comos)理事長は、同法の編成における経験を語った。同連合会に同国の社会的経済関係団体のうち85~90%が加入していることから、国会議員らに対して同連合会が業界を代表しており、法律の制定のための準備交渉を始めるべく説得することは簡単であった。2008年の総選挙直後にCEPESは同法の制定という考えを全政党に提案する一方で、内部でも議論を重ねて、あまり詳細に立ち入らない形でわずかな条項の法律にするという合意に達した。2009年2月にCEPESと労働移民省との間でそのためのプロセスの対話が始まったが、その交渉は必ずしも平和なものではなく、数多くの議論を引き起こした。彼女は以下の点を強調した:

  1. 全会一致による法律の可決
  2. 雇用および収入を生み出す点における、社会的経済の貢献の認識
  3. 公共部門と社会的経済のプレイヤーとの間での対話チャンネルの確立
  4. 社会的経済を推進するという、スペイン政府および/あるいは各州政府の義務
  5. 実業界および学会に対する、社会的経済の視覚化

とはいえ、統計の作成や公共政策の実施により、社会的経済の発展における障害を除去するために、同分野の成長を促す上で課題があるのは確かである。
次に発表したIUDESCOOP(社会的協同経済大学研究所、Instituto Universitario de Economía Social y Cooperativa) およびバレンシア大学のヘンマ・ファハルド(Dr. Gemma Fajardo)は、この法律で制定されている内容を説明した。彼女はまず、2009年2月の社会的経済における欧州議会の決議(英語版は http://www.europarl.europa.eu/sides/getDoc.do?type=TA&reference=P6-TA-2009-0062&language=EN で)がこの法律の推進において重要な役割を果たしたと語り、NPOや協同組合など社会的経済の各活動についての規定を変更することなく、それら全てを同じ枠組みに入れたのがこの法律であると説明したが、経済活動の種類ではなくその運営方法こそが社会的経済の目的の達成において考慮されるべきであるため、同経済の担い手の定義については非常に批判的であった。また、同法では各州政府が社会的経済の推進を担当することになっているが、スペイン憲法の第131条では経済活動を推進するのは中央政府であることから、その点の矛盾も示された。さらに、社会的経済憲章では明確に規定されている「自主的かつ開かれた組合員制」が同法では抜け落ちている点についても疑問を呈した。
最後に発表した、同じくIUDESCOOPおよびバレンシア大学のホセ・ルイス・モンソン(Dr. José Luis Monzón)は、社会的経済部門に対する分析を行った。彼はまず、スペインが欧州で始めて、欧州議会や学術調査に由来する定義によりこの法律を制定したことを強調し、公共政策の編成のためにこの部門の代表が政府と対話を行うことができるようになっていると語った。また、社会的経済は同国経済の10%を占めており、100万人以上を雇用していることなど、さまざまな数字でその規模を示した。

この法律が社会的経済を推進する上で貴重な土台となっている点については疑問の余地はないが、社会的経済が本当の意味で推進されるためにはまだまだ多くのことがなされる必要があることも確かである。スペインではまだほとんどの人が社会的経済を理解していないことから、各州政府が社会的経済についての情報を提供したり、研修講座を開いたり、会議および/あるいはさまざまな公共政策を実施したりして、協同組合やNPOなどの発展を加速させて、これら経済活動が全体として認知されるようにすることが今すぐ求められる。

さらにもう一点、今回の発表が非常に欧州中心的であり、中南米(特に連帯経済局ブラジル連帯経済フォーラムが二人三脚で同部門を推進してきたブラジル)、カナダ(特にケベック州)およびアフリカなど他の大陸で起きている同様の動きについての言及がなかった点が残念である。私がこう思うのは、おそらく中南米に焦点を当ててきた私の活動ゆえなのかもしれず、スペイン政府が構築している国際協力の多くが欧州連合を通じてのものであることも認めるが、スペイン国内の社会的経済の推進者が欧州外のパートナーとの対話を始め、相互学習のチャンネルを構築できれば非常に有意義なこととなるであろう。

アジア社会的企業家サミット2010

12月 5, 2010

アジア社会的企業家サミット2010が2010年11月29日(月)と30日(火)、韓国ソウル市瑞草区のソウル教育文化会館(서울교율문화회관)で開催された。この会議は共に働く財団(함까 일하는 재단)が主催したが、この財団の理念は「社会格差を是正し雇用にやさしい環境を生み出すことによる持続可能な社会の建設」であり、「非営利部門を通じて尊厳のある雇用の創出」および「社会の最脆弱階層に向けて雇用福祉を改善すべく社会協力サポートを強化」という目的の下で多様な活動を実施している。これほどの規模の会議を開催した上で、英語や韓国語に加えて日本語や中国語でも全発表の要約を提供してくれた同財団には、感謝の意を表明したい。

韓国は、社会的企業を推進する法的枠組みを持つ、世界でも数少ない国である。2007年7月1日に施行された社会的企業育成法(사회적기업육성법、日本語訳はこちら)では社会的企業、すなわち「脆弱階層に社会サービス又は就労を提供し地域住民の生活の質を高めるなどの社会的目的を追求しながら、財貨及びサービスの生産販売など営業活動を遂行する企業」に対して、中央政府や地方自治体による情報面や会計業務、税金減免、施設や人件費などの財政支援、公共機関による優先購入などを認めている一方で、この制度の受益者である社会的企業は「営業活動を通じて新たに創出した利益を社会的企業の維持拡大に再投資するように努力」するよう求められている。現在のところ政府に公式認定された社会的企業は300社以上存在し、1万人以上に雇用を生み出している。

この会議はソン・ウォルジュ(송월주)共に働く財団理事長およびパク・チェワン(박재완)雇用労働部長官(日本風に言うなら雇用労働大臣)のあいさつで始まり、その後ガワド・カリンガ(Gawad Kalinga)のアントニオ・メロト(Antonio Meloto)氏(フィリピン)の基調講演で始まった。まず彼は韓比間の二国間協力に加え、韓国のポップ音楽やテレビドラマの同国における影響などを賞賛した上で、韓国や日本、台湾、香港やシンガポールが貧困から脱出できた以上、フィリピンも同様に貧困から脱出できるはずだと論じた。彼は、地主と小作人が共同作業を行うことにより、地主は土地評価額の上昇により、そして小作人は収益の上昇により互恵的な関係を得ることができる例を示した上で、政府がきちんと仕事を行おうとしない400地域において投資を獲得したと述べた一方で、高価格で生産物を販売できるようなフィリピンブランドや社会的イノベーションの欠如という問題点も指摘した。また、米国に移住したフィリピン人は貧困層ではない点も指摘し、本国のフィリピン人に貧困脱出への奮起を促した。

そして全体会第1部が、「アジアの貧困について、革新的なアジアの社会的企業家が語る」という題名で行われた。活知識立群社の許国輝氏(香港)は、貧困や不平等を克服する概念として中国本土で現在「新しい公益」という表現が広まっていると述べ、社会運動を「社会における権力の性質および行使に疑問を呈する」ものと定義した上で、都市部と農村部の間での教育格差が深刻な問題となっている中国において、農村の教師の能力を高めている彼の社会的企業を紹介した。その後GOONJのアンシュ・グプタ(Anshu GUPTA)氏(インド)は、中古の布を活用して貧困層に服や女性用ナプキンを提供したり、橋や学校などを建設したりしている彼の事業を紹介した。TABLE FOR TWOの小暮真久氏(日本)は、学食などで客が25円追加で払うことにより、アフリカの貧困層に食事を提供できるようになる彼の事業を説明した。また、スリランカ国連友好協会のDeshapriya Sam Wijetunge Warnakula Arachchiralalage氏(スリランカ)は、受刑者に手工芸を教えることにより、出所後に手に職を持つことができるようになるプロジェクトを紹介した。そしてアショカ財団のデヴィッド・ポラック(And David POLLACK)氏(米国)は、社会イノベーターに資金援助を行う彼の事業の概要を説明した。

全体会第2部では、文化や芸術の役割および課題に焦点が当てられた。ソウル文化財団(서울문화재단)のオ・ジニ(오진이)女史(韓国)は、バレエダンサーやピアニストなどの芸術家になりたがっている子どもたちを資金的に援助するプロジェクトを紹介した。たんぽぽの家の播磨靖男氏(日本)は、障害者が作品を展示して、プロの芸術家としての評価を受けることができるギャラリーについて紹介した。イウム(이음)のキム・ビョンス(김병수)氏(韓国)は、全州市の中心市街地やその周辺の農村において、地元資源やさまざまな文化活動(伝統的なもののみならず現代的なものも)を活用したまちおこしの事例を紹した。そしてO-schoolのケニー・ロウ(Kenny LOW)氏(シンガポール)は、若いダンサーのプロモーション活動を行って彼らに雇用を創出しつつ、商業芸術や公演を軽蔑視するシンガポールの伝統的価値観に挑戦する彼の事業を紹介した。

その後、3つの分科会が同時並行で開催された。私は「連帯経済に根ざした社会的企業」に参加しており、ここでは5名が発表を行った。まずCSRSME Asiaのベンジャミン・キニョネス(Benjamin QUIÑONES)氏(フィリピン)が、さまざまな社会的企業で構成される供給網であるネゴセントロ(NEGOSENTRO)について説明し、3つのP(Profit(利益)、Planet(地球)およびPeople(人々))が優先事項であると述べた。次にビナ・スワダヤ(Bina Swadaya)のバンバン・イスマワン(Bambang ISMAWAN)氏(インドネシア)が、収入源の創出やオープンな精神、そして民主的管理に基づいた、地域に根ざした開発や自助組織の設立のための活動を行っている彼の組織について紹介した。パルシックの井上礼子女史(日本)は東ティモールのフェアトレードコーヒーの実践について語り、東ティモール側に会計などの技術を教えることの重要性および困難を紹介した。韓国農漁村社会研究所(한국농어촌사회연구소)のクォン・ヨングン(권영근)氏は、江原道横城郡において地域の資源を循環させたり農村への指導を行ったりすることで自給自足型の地域社会を作る実践例について語り、韓牛の生産の実例も話した。そして最後にバイナリー大学のデニソン・ジャヤスリア(Denison JAYASOORIA)氏(マレーシア)が同国における連帯経済の展望、特に老人介護や教育機関そして早期教育の分野における展望について語った後、2011年11月1日から4日までの開催予定で彼が準備中の第3回アジア連帯経済フォーラムの宣伝も行った。

これと同時並行に、「社会的イノベーターとしての社会的企業」では4名が(Re:Motion Designsのジョエル・サドラー(Joel SADLER)氏(インド)は足を失った人に対して低価格で義足を提供するサービスについて、Gadhia Solarのディーパク・ガディア(Deepak GADHIA)氏は太陽エネルギーシステムについて、ウリドンネ(우리동네)のアン・ビョンウン(안병은)氏(韓国)は水原市にて喫茶店などで精神障害者を雇用している事例を、そしてAsiaiixのダリーン・シャナズ(Durreen SHAHNAZ)女史(シンガポール)は社会的企業に融資する投資機関について)、また「アジアの事例の検討および社会的サービスを提供する社会的企業の主要課題」でも4名が(タソミ財団(다솜이재단)のパク・ジョンヒ(박정희)女史(韓国)はシングルマザーへの雇用創出や低所得層の患者向けの無料医療について、エデン社会福利基金会の周庭妤(Catherine CHOU)女史(台湾)は主に障害者が運営するガソリンスタンドについて、ケア・センターやわらぎの石川治江女史(日本)は高齢者や障碍者向けの24時間介護サービスについて、そして香港社会服務連会のWing Sai Jessica Tam女史は社会的影響の評価ツールについて)それぞれ発表を行った。

2日目は、1)文化芸術、2)グリーン技術、3)農村経済、4)社会ベンチャーインキュベーション、5)フェアトレードおよび6)エコツーリズムの6つの分野で同時に分科会が開催された。その後全体会第3部では社会的金融が論じられ、4名が発表を行った。Aspen Network of Development Entrepreneurs のランダル・ケンプナー(Randall KEMPNER)氏(米国)は、成長中の中小企業への投資の重要性を強調した。SA Capitalのリチャード・ロケ(Richard ROQUE)氏(香港)は、投資家から資金を得るために社会的企業家が知っておくべき主要概念を紹介した。E+Coのスウェタ・ポクハレル(Sweta POKHAREL)女史(タイ)は、クリーンな技術への社会的ベンチャーに対して投資を行っている彼女の事業の概況を説明した。そしてソーシャルエンタープライズネットワーク(서시얼엔터프라이즈네트워크)のイ・チョルヨン氏(이철영)氏(韓国)は、同国において社会的企業のさらなる成長のために金融部門が果たす役割について紹介した。

この会議ではアジア、特に社会的企業育成法により何百もの社会的企業が育っている主催国韓国において、社会的企業が成長を続けているおり、何万人もの人に雇用を生み出していることが示された。また、この会議では農業、フェアトレード、医療、再生可能なエネルギー、文化活動やエコツーリズムなど社会的企業の多様性も明らかにされており、これらアジア諸国のさまざまな分野にこのような経済活動が浸透していることがわかった。

その一方で、これら経済活動を本当に推進する上でアジアの人たちが認識しておく必要のある課題も明らかになった。アジアで何億人もが未だに苦しんでいる貧困の元凶として資本主義を疑問に呈す人は(ほとんど)いなかった。確かにアジア諸国の多くでは経済はまだまだ成長しており、資本主義との蜜月関係を楽しんでいるのだろうが、不可避的に環境面や社会面で外部不経済を生み出す資本主義の構造そのものについてもっと辛辣な批判があってしかるべきだっただろう。また、労働者協同組合やNPOなど、自主管理型の経済活動の重要性もこの会議では見過ごされていた。最後になったが、社会的企業のみならず、マイクロクレジットやフェアトレード、NPOや財団なども含めたより広い展望も欠けていた。他の大陸ではかなり発展しているがアジアではまだまだの連帯経済運動は、この報告で示したあらゆる努力を集束させ、さらに高い次元に引き上げる上で重要な役割を果たすことだろう。

滋賀県、環境保護や雇用創出のために補完通貨の導入を検討

4月 19, 2010

2010年4月7日(水)に滋賀県大津市で、環境保護や将来的には雇用創出のために補完通貨システムを導入する可能性についての講演会が開催された。

滋賀県には日本最大の湖である琵琶湖が存在し、この琵琶湖は滋賀県民のみならず京都府民や大阪府民、さらには兵庫県民の水がめともなっている。琵琶湖の水質に対する懸念から滋賀県では環境運動が盛んで、2006年7月には環境派の嘉田由紀子知事が就任している。補完通貨の専門家であるベルナルド・リエター(Bernard Lietaer)氏が今回、同県に対するコンサル活動を行う目的でベルギーから日本に招聘され、月曜日に同知事と面会した際にリエター氏は、同県における環境政策の推進目的の補完通貨の概略を紹介した。

彼の講演は、工業化時代にデザインされた大規模システムが、ポスト工業化時代に入ったことにより危機に瀕しているという事実を示すことから始まり、一般的な思い込みとは裏腹に、通貨制度が「価値観に対して中立ではない」(つまり、ある価値観の実現を推進する一方で、他の価値観の推進はむしろ妨害する)ことや、特に現在の法定通貨が過度に陽的(男性的)であることから、陰的(女性的)価値観を推進するためには別の通貨が必要であることからわかるように、異なった社会や経済の目的を追求するのであればそれにふさわしい通貨制度が必要であることが示された。

リエター氏の提案は、滋賀県が抱えるさまざまな課題に対処するために、2種類の補完通貨を導入するというものである。まずは、欧州4都市(ブリストル(英国)、ブリュッセル(ベルギー)、リバプール(英国)、ルクセンブルク(ルクセンブルク))で導入が検討されている事例と同様に、「びわ」と呼ばれる新しい補完通貨でのみ支払い可能な環境税の導入である。これが実施されると滋賀県は、二酸化炭素の排出権の際のように、環境のためになるボランティア活動を実施することで納税額相当のびわを稼ぐか、あるいは誰かからびわを買い取ることで納税額相当のびわを手に入れることが必要になる。2つ目は、南米のブラジルやウルグアイで導入されている企業間通貨を導入することによって企業間取引を推進し、これによって雇用創出を推進するというものである。

会場からはびわに関する質問が集中したことから、滋賀県では補完通貨の社会経済的な側面よりも環境保護的な側面に対して注目されている一方で、悪化する一方の労働条件にはあまり関心が払われていないような印象を私は受けた。とはいえ、滋賀県には数万人のブラジル人が居住しており、日本の製造業の苦境により彼らが失業に苦しんでいる現状を考えると、雇用創出について滋賀県が真剣に対処するつもりであれば、ブラジルはフォルタレザ市で生まれ、雇用創出に大いに役に立っているパルマス銀行モデルの導入についても真剣に検討することが推奨される。

第1回連帯経済社会フォーラム報告

4月 18, 2010

第1回連帯経済社会フォーラムがブラジルはリオ・グランデ・ド・スール州のサンタ・マリア市で2010年1月22日から24日にかけて開催され、この新しい経済のさまざまな分野における達成事項が紹介されたり、克服すべき課題が明確化されたりした。数百名にのぼる参加者の大多数はブラジル各地および近隣諸国(特にアルゼンチンやウルグアイ)からの参加であったが、米国、カナダ、欧州およびアジア(私のみ)からの参加もあった。このイベントへの参加者の大多数は同州ポルト・アレグレ市やその近郊に移動し、そこで1月25日から29日にかけて開催された世界社会フォーラム10周年フォーラムで議論がさらに深められた。

1月22日(金)は、ポルト・アレグレで2001年1月に第1回世界社会フォーラムが開催されてからこれまでの経過を振り返った後、2つの全体会議(「ブラジル国内市場における連帯フェアトレードに関する全国セミナー」と「国際集会: 連帯経済と世界社会フォーラム-過去の回顧と将来展望」)が同時並行で開催された。私は国際集会のほうに参加したが、そこでは連帯経済に関して周辺国の参加者が、連帯経済部門でブラジルが達成した数々の業績(連帯経済局(SENAES)やブラジル連帯経済フォーラム(FBES)などの創設)を賞賛したり、連帯経済を国外にも広げるためにブラジルにさらにリーダーシップを発揮してくれと要請したりしており、またメルコスル(南米共同市場)加盟各国(アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ブラジル)内で関税政策を調整し、連帯経済の商品が国境を越えて取引しやすくなるようにすることの重要性が強調されたりした。

2日目(1月23日(土))は、5つの分野(「連帯金融」、「教育と文化」、「国際連帯統合」、「連帯生産/販売/消費」および「食糧・栄養主権」)で分科会が開催された。私は連帯金融分科会に参加したが、そこでは私自身を含む7名が発表した。アルゼンチンから来たREDLASESのエロイサ・プリマベーラ(Heloisa Primavera)女史は、現在の通貨制度では通貨供給量が不十分であることを指摘した上で、ブラジル中銀が地域通貨に対して技術的支援を開始していると述べた。彼女は連帯経済が依然として貧者の経済活動とみなされている現状を批判し、新たな開発モデルとして見直すことを提唱した。その後補完通貨研究所 JAPAN創設者として私が続き、現在の通貨が負債であるという特徴を持っている点や、地方自治体はおろか各国政府でさえ自らの交換手段=通貨を制御できない点、また複利によって指数関数的な成長が強要されている点や、貧しいから金持ちへと富が再配分されている点を指摘し、補完通貨の事例をいくつか紹介した。その後リオ・グランデ・ド・スル州連帯交換市ネットワーク(Rede Estadual de Trocas Solidárias)のパウロ・モレイラ(Paulo Moreira)氏が、ブラジルの法定通貨レアルではなく交換券を使って商品が交換される交換市の実践について簡潔に紹介した。

さらにプレゼンは続いた。リオ・グランデ・ド・スル州の州都ポルト・アレグレから参加した中南米労働者協同組合・互助組合連合(COLACOT、Confederação Latinoamericana de Cooperativas e Mutuais de Trabalhadores)のロジェリオ・ダロー(Rogério Dalló)事務局長は、ブラジルにおいて信用組合の預金額が全預金額の4%に過ぎないと語り、バーゼルII や国際決済銀行などが推し進める新自由主義的な政策を批判した上で、中南米でもドミニカ共和国やパラグアイなどはそのような新自由主義的な政策をそのまま導入していないことを指摘し、信用金庫をバーゼルIIの対象外にすることや連帯経済世界銀行の創設を提唱した。ブラジルはセアラ州の州都フォルタレザ市でパルマス銀行(http://www.bancopalmas.org.br/およびhttp://www.banquepalmas.fr/)を創設したジョアキン・メロ氏は、ブラジルに存在する膨大な貧困は、ブラジル人の半数が金融機関から排除されているという現実に起因すると語り、パルマス銀行などのコミュニティ銀行は「ネットワークを形成した連帯金融サービスで、提携やコミュニティをベースとしており、連帯経済に基づいた雇用や収入を生み出す目的で地域経済の再構成に専念する」ものであると語った。フランスでSOLプロジェクトと呼ばれる補完通貨を実践しているセリナ・ヴィタカー(Celina Whitaker)女史は、このプロジェクトが通貨について考え直そうという着想から発生したものであり、GDP以外の指標を基にした経済活動の推進を意図していると説明したあとで、連帯経済を社会運動の目的達成のための手段と規定し、この補完通貨の使用方法(連帯経済関係の商店におけるポイントカード、タイムバンクおよびボランティア向けポイント)を紹介した。そして最後にSENAESのアロルド・メンドンサ(Haroldo Mendonça)氏が、ブラジルでも開発が遅れている北東部への融資に特化した北東部銀行(Banco do Nordeste)の成功に加え、地域通貨を発行しているコミュニティ銀行に対する中央銀行の努力を紹介した。さらに、メキシコの全国協同組合連盟(Alianza Cooperativa Nacional)の社会運動を支援しようという提案も行われた。

1月24日(日)には、食糧・栄養主権、都市農業、国際統合、行政とNPOの協働、連帯教育と文化、連帯経済の社会主義的なアイデンティティ、民衆協同組合インキュベータ、連帯経済のためのソーシャルネットワークサイト(Cirandas)、原材料調達ルートの確保、若者の参加および新たな教育方法などさまざまなテーマで、20ものワークショップが開催された。午後には土曜日の議論の内容がまとめられ、連帯経済と世界社会フォーラムとの間でお互いのためになる交流が行われ、これにより各地の連帯経済の担い手が国や大陸を超えて連携できるようになったことや、公共政策の調整の必要性、実践例のマッピングの重要性、大企業が食糧の供給を制御している現状への抗議、種子銀行の創設、食糧に対する権利、都市と農村の連帯、南北間のみならず北北間や南南間でのフェアトレードの重要性や開発も出るのパラダイム・シフトなどが話題に上った。

議論自体は翌週もポルト・アレグレ都市圏で続けられ、各国(ケベック、パラグアイ、ブラジル、メキシコ)における公共政策の比較を行ったセミナーや、ウルグアイ・ブラジル・フランスおよびボリビアから5名が無償経済について語ったセミナーなどが行われた。ブラジルでは連帯経済は民主主義の伝統に基づいており、ルラ政権(2003~)のもとでSENAESやFBESの創設により強化された一方で、パラグアイでは連帯経済はまだまだ歴史が浅いことや、メキシコでは信用金庫を推進する法制度に向けた取り組みが行われていることが紹介された。無償経済については、現在の経済では重商原理主義が行き過ぎていることや、医療が公共財であることから無料であるべきだという議論が行われた。

合計8日にわたったこのフォーラムは、正直なところちょっと長過ぎたと私は思う。特に真夏の昼間に冷房もない場所で議論が行われたことから、参加者にとってかなり疲れるものであった。また、ポルト・アレグレ都市圏ではセミナーやワークショップが各地に分散する形で開催されたが、その距離もまた問題点だったと言える。外国からの来訪者の観点で言うと、設備の整った大学など建物内で会議が行われていればありがたかったと思う。

また、このフォーラムを改善する上でのもうひとつの課題は、中南米以外とネットワークを強化し、中南米外から参加者が来て交流できるような通訳サービスの提供である。アジアからの参加者が私だけで、中南米外からの参加者が私が思っていたよりもはるかに少ない(中南米以外からの参加者は10名未満)だったことは残念である。第2回連帯経済社会フォーラムが開催される場合には、中南米以外からの参加を増やし、この運動を全世界的なものへと進化させてゆくために、さらなる努力が必要となるだろう。

第9回ワーカーズ・コレクティブ・ジャパン全国大会報告

4月 16, 2010

第9回ワーカーズ・コレクティブ・ジャパン(WNJ)全国大会が2009年12月5日(土)および6日(日)に、さいたま市で開催された。全国各地から600名近い人たちがこの場所に駆け付けたが、そのほとんど(9割以上)が50代から60代の女性であり、全国各地に散らばっているため日頃は目にすることができない仲間に会って交流を行っていた。この報告書を作成する上で、WNJによるレジメが非常に役に立ったことから、その点でWNJには感謝の念をお伝えしたい。

ワーカーズ・コレクティブ・ジャパンは1993年より2年ごとに全国大会を開いており、県支部などがこれに参加している。日本初のワーカーズは1982年に神奈川県で生まれた「にんじん」であり、その後東京都や千葉県などでもワーカーズが設立された。これらの多くが、食や子育ておよび老人介護といった当時満たされていなかった社会的ニーズを満たすために、当時すでに日本各地に広がっていた消費者生協による取り組みとして生まれたことに留意することが非常に重要である。言い換えるなら、ワーカーズの大部分は既存の消費者生協と緊密な関係を持っており、これによるメリットおよびデメリットがあるが、それについては後述する。また、数十のワーカーズがある都道府県もあれば全くないところもあるなど、ワーカーズ運動の広がりには地域的にかなりバラつきがあるのも確かである。

会議は、土曜午後に同時に開催された分科会7つから始まった。第1分科会では、現在日本にワーカーズを律する法律がないことから、その立法について議論が行われた。2011年4月に施行される保険業法の改正により共済組合に悪影響が出ることから、それに関する対策が話し合われた。立教大学の藤井敦史先生は韓国の社会的企業育成法について発表を行い、この法律が労働組合と反貧困運動の成果であることを指摘した上で、社会的脆弱階層に対して雇用および/あるいは社会サービスを提供する企業であれば社会的企業とみなされ、税金の控除や補助金などのサポートが受けられることを紹介した上で、日本に向けた戦略を提唱した。その後大河原雅子参議院議員が、法律の制定に向けたプロセスの概要を紹介した。第2分科会ではワーカーズが提供する子育ておよび老人向けサービスが取り扱われ、4名の発表者が毎日の活動について発表し、それによる利用者の生活向上の様子を紹介した。

第3分科会は食関連のワーカーズに関するものであり、その厳しい現状が紹介された上で議論された。首都圏では63のワーカーズのうち28が赤字経営となっているが、発表者は神奈川県が他都県と比べて業績が好調であることに着目し、その理由として老人介護などの分野で生活クラブ生協と食関連ワーカーズとの緊密な関係によって経営が好調であるのではないかという推論を述べた。弁当の多くは500円を超える値段であるが、現在のデフレ下にある日本では他の店が200円からという非常に安い価格で弁当を販売している現状を踏まえると、これらワーカーズの意義を理解している消費者でも経済的なオプションを選択してしまうことを忘れてはならない。

第4分科会はワーカーズの経営に関するものであり、老人介護、子育て支援、食関連などにおいて5つの成功例が紹介された。千葉県佐倉市の素晴らしい事例では、使用済食用油の回収やリサイクル、有機食品や弁当の販売など多角経営を行い、経験により時給1,000~1,300円を会員に支払っており、販売の停滞時にはチラシを近所に配っている。第5分科会では子育て支援について取り扱われ、地域社会におけるハブとしての子育て支援センターの意義や、労働集約型サービスであることからの高コスト問題が話題になった。

第6分科会では、消費者生協とワーカーズの緊密な連携による地域社会の創造が取り扱われた。神奈川県のある事例では、広告網や自主管理経営の経験など消費者生協の既存の資源をフルに活用し、高齢者介護における市民参加を推進している。別の発表者は、別の消費者生協とワーカーズとの合弁事業として福岡に設立された社会福祉法人について紹介した。第7分科会では地域社会で誰もが働く可能性が模索され、皿洗いサービスやパン屋、弁当サービスなど、引きこもりの若者や障害者など、ワーカーズに参加する前に社会的疎外に苦しんだ人たちに雇用を生み出している事例が紹介された。

日曜日の午前は、埼玉県副知事などによるあいさつから始まり、その後都市農業サポートから子育て支援や弁当サービスなど、新規ワーカーズ6つの原案発表が行われた。WNJは今回初めて、ワーカーズという概念を広く伝える目的で、外部の若者にこのような事例発表を依頼しており、参加者は原案の実現性を分析するというよりも、そのユニークさを楽しんでいた(大学生のプロジェクトの中では、教授の懐を大いにあてにしていたものもあった)。午後にはワーカーズ製品の販売や食関連の問題、NPOバンクや若者関連の問題などで9つのワークショップが開催された。

今回の全国会議は、私にとって日本のワーカーズの実践例を知る事実上初めての機会であり、その功績および課題を伺い知ることができた。ワーカーズと消費者生協との間での強いつながりは、食関連のワーカーズにおいて他の連帯経済の担い手から有機食品などを手に入れることができるという点で有益だが、それによって原材料が高くなり事業の採算性が下がるという点も挙げられる。このように高い原材料ではなく、通常の流通網から別の材料を手に入れることができればコストパフォーマンスも改善するだろうが、消費者生協の精神を他の社会経済分野にも広める方法としてワーカーズが構想されていることから、実際に別の流通網に移行するようなことはないだろう。

また、ワーカーズで働く人の多くが最低賃金未満しか得られておらず、そのことから生活するには他の収入源(夫の収入あるいは年金)を持つ必要がある点も忘れてはならない。この事実により、ワーカーズがあまり稼ぎを心配しなくてよい中流から上流の主婦や年金生活者のみのためのものであるという誤解が起こる可能性があり、男性が家族を養えるような雇用を生み出すためには別のビジネスモデルを生み出すことが早急に求められている。この点では、社会的企業に関する韓国の法律の達成事項を研究した上で、その中でどの要素を日本の法制度に適用するのかを見極めたり、ヨーロッパや中南米など別の大陸にあるワーカーズとの交流を促進したりすることが非常に有益であろう。

第2回アジア連帯経済フォーラム

4月 15, 2010

第2回アジア連帯経済フォーラムが、2009年11月7日(土)と8日(日)に東京都内の国連大学、青山学院大学およびウィメンズ・プラザで開催された。11ヶ国から約320名がこの国際イベントに参加し、日本、アジア各国およびそれ以外の世界における連帯経済の理論的基盤や実践例を学んだ。さらに、10を超えるNGOがブースで製品や実践活動を紹介し、訪問者に対して連帯経済の幅広い活動を紹介した。

この会議は、PARC (アジア太平洋資料センター)の創設者の一人である北沢洋子女史のイントロスピーチから始まり、そこで彼女はアジアにおいて「連帯経済」という用語がほとんど使われていないことを認めた上で、欧州における連帯経済の歴史的発展の経過に加え、この運動を推進してきた主要なグローバルネットワークとしてRIPESSやAlliance 21内のWSSEについて紹介した。その後FPH財団のピエール・カラム(Pierre Calame)氏によるビデオ講演が行われ、そこで彼は今や使い古されている「21世紀はアジアの時代」という表現が連帯経済にもあてはまると語り、「テリトリー」(日本語にするなら「地域」。フランス語圏の人はこの用語を好んだが、英語圏の人は「コミュニティ」という表現のほうがよいと考える傾向にある)が自分たちの通貨やエネルギー源を管理できるように私たちの経済を変革し、地域の労働力を社会統合のために使い、より自給自足可能な地域づくりを目指すべきだと主張した。

セッション1は世界における連帯経済の展望についてであり、発表者3名がその展望を共有した(他にもブラジルからの参加者が予定されていたが、急病のために急遽欠席した)。まずカナダ・ケベック州からヴァンサン・ダジュネー(Vincent Dagenais)氏が、融資を受けられない貧しい人たちが受ける社会的疎外、市民参加型の地域運営の必要性および食料主権という3つの主要課題を話題にし、グローバル化により人々が疎外(exclude)されるのに対し連帯経済は人々を包摂(include)すると結論付けた。次にフランスのマルテーヌ・テヴニオー(Martine Theveniaut)女史とカナダのイヴォン・ポワリエ(Yvon Poirier)氏が、「パクト・ロコー」(”Pactes Locaux”、訳すと「地域合意」)と呼ばれる、地域ベースの活動(環境、社会、文化、金融およびガバナンス)を世界的にリンクする取り組みを紹介した。3番目に話したジョブ・オーストラリアのデヴィッド・トンプソン(David Thompson)氏は、同国では貪欲に利益を追求する主流経済と公共の利益を追求するもう一つの経済が存在すると指摘し、気候変動やピークオイル(原油の生産量が今後減るという見通し)、また食糧危機などといった今日の深刻な問題により、さらなる変革が生まれることを希望した。

セッション2ではアジアに焦点が当てられ、5ヶ国から6名が発表を行った。まず、2007年10月にフィリピン・マニラで第1回アジア連帯経済フォーラムを開催したベンジャミン・キニョネス(Benjamin Quiñones)氏が、社会や環境に対して責任を持つ同国の中小企業によるネットワークCSRSMEについて紹介し、このネットワークの中での原料供給や企業活動の改善が課題であると語った。次にマレーシア・バイナリー大学のデニソン・ジャヤスリア(Denison Jayasooria)氏が、経済発展を遂げたものの貧富の差や都市と農村における開発の差が未だ大きい同国の現状を簡単に紹介した後に、むしろこの現状を克服すべくマイクロクレジットや生産協同組合(ワーカーズ・コレクティブ)など新たな実践例が生まれているきっかけになっていると肯定的なコメントを行った。そして実践例として、マレーシア全国の42地域でITハブセンターを築き、特に各地域の女性がこのインターネットを活用して商品やサービスの販売を改善できるようにしているショーン・イサック(Shaun Isaac)氏の取り組みが紹介された。その後インドにある自営女性連合(SEWA)のイラ・シャー(Ira Shah)女史が、マイクロクレジットの実践例や、インド国内のみならずアフガニスタンを含む周辺諸国に広がった女性のネットワークについて説明した。

4番目に韓国の社会投資支援財団のチャン・ウォンボン(장원봉)氏が、同国における社会的企業および自立支援センターの現状について話した。現在韓国には、労働部(日本風にいうなら労働省)が認定した社会的企業が251社あり、これらは雇用創出あるいは社会サービスの提供(その両方の場合もあり)を主要目標としており、社会的弱者や高齢者、および障害者に対して活動を行っている。また、自立支援センターは242ヶ所あり、2967の事例により2万6691名に雇用が生み出されている。最後に日本の早稲田大学の西川潤氏が日本経済の構造について話を行い、日本では政治家など従来型のエリートが、農協や消費者生協などの非営利セクターに対し、支援というよりも支配を行ってきたが、1990年代より新たな形の非営利活動が生まれていると説明した。

セッション3では連帯金融が取り扱われ、4名が発表を行った。まず国際労働機関のバーント・バルケンホール(Bernd Balkenhol)氏が、連帯金融の概要や従来型の金融との違いを紹介し、利益のみならず環境や社会面での価値も追求するのが連帯金融だと述べた。次にINAISEのヴィヴィアンヌ・ヴァンドムルブルック女史がその組織や、オランダのトリオドス銀行やアイルランドのクラン・クレド、そしてフランスのLa NEFなど同組織の会員団体の活動を紹介した。3番目に、米国ワシントンDCに本拠を置くNGOであるMIXのミコル・ピステッリ(Micol Pistelli)女史が、世界各地のマイクロクレジットの業績分析について説明した。最後に日本から、大和総研の河口真理子女史が同国における社会的金融の現状を説明し、従来型の金融機関が提供する社会的金融サービスを非営利部門ももっと利用すべきだと提案した。

セッション4では、社会的企業の果たす役割が取り上げられた。セッション2でも登場したベンジャミン・キニョネス氏は、職人グループや連帯観光、安価な住宅や健康によいコーヒー、葬儀サービスや有機緑茶など、タイ、マレーシア、インドネシアおよびフィリピンで実施されているさまざまな社会的企業や生産協同組合の実例を紹介した。次にワーカーズ・コレクティブ・ネットワーク・ジャパンの藤木千草女史が、食事サービス(レストランやお弁当)、パン屋、ジャム、カフェ、保育園および高齢者向け交通サービスなど日本における多様な事例を紹介した。3番目に、韓国・共に働く財団のハ・ジョンウン(하정은)女史が、同国における悲惨な労働条件に苦しむ貧窮層によりよい就労機会を提供するために社会的企業が生まれたと説明し、法制度を通じて政府が最大2年間、社会的企業と認定された企業に補助金を出すと話した。最後に日本・聖学院大学の大高研道氏が日本における連帯経済の課題について述べ、社会的疎外の実例をいくつか示した後で既存の連帯経済の担い手が社会的・地域的な包摂も行うべきだと提案した。

日曜の午前には、「社会的金融」、「フェアトレード」、「高齢者介護と医療」、「自給自足的なコミュニティ」および「国際連帯税」という5つのテーマでワークショップが開催された。その後セッション5では連帯経済の達成度に関する指標や測定方法について議論が行われた。まず、セッション3でも発表を行ったミコル・ピステッリ女史が、自らが所属するMIXというNGOが用いている評価手法の詳細を説明した。その後フィリピンのASKIという団体のローランド・ヴィクトリア(Rolando Victoria)氏が、A-という最終評価を得た評価について語った。最後にパリから来たエディス・シズー(Edith Sizoo)女史が、人間の責任憲章の意義について説明した。最後のセッションではこのフォーラムのコンセンサス文書の編集作業が行われ、最終文書は間もなく公開されることになっている。第3回アジア連帯経済フォーラムは、2011年にマレーシアで開催予定である。

今回の会議についてであるが、日本においては連帯経済の担い手の多くが中流の上の人たちで占められており、特に有機食品や高齢者介護といったニーズの充足に対する関心は高いものの、雇用創出や貧困撲滅といった課題は顧客満足度よりも重要度が低い点が感じられた。しかしながら日本も、高齢化に加え政府部門の債務増大、また中産階級の解体など社会や経済の構造面で劇的な変化を迎えており、連帯経済として現状に本当に苦しんでいる人たちに代替案を提示したいのであれば、日本においても連帯経済運動全体としてこれら傾向にもっと配慮することが不可欠であろう。

国際会議「通貨の地域化」がドイツで開催

10月 9, 2006

国際学術会議「通貨の地域化 – 自律的な地域発展のきっかけとしての地域通貨システム」(ワイマール大学主催)が、ドイツ・ワイマール市で9月28日(木)と29日(金)の2日間にわたって開催され、ドイツ国内をはじめ欧州各国やアルゼンチン・インドネシア・オーストラリア・ニュージーランド・南アフリカなど世界各国から250人余りが参加した。グローバル化の影響を受ける中で各地域が自立的に発展する道具として地域通貨をとらえている研究者などがドイツ国内外から参加し、それぞれの観点から貴重な研究を発表した。

第1日目(28日)は基調講演として、道教の陰陽の観点から地域通貨を「補完通貨」の一部に分類したベルナルド・リエター氏が、インターネットを通じて補完通貨の役割についての講演を行う予定であったが、技術的な問題から急遽、リエター氏と長年にわたって補完通貨の研究や推進に関する活動を行っているマルグリット・ケネディ女史が代役を果たした。彼(実際は彼女)によると、陽は競争や拡張主義など男性的な価値観を、陰は平等や持続可能性など女性的な価値観を象徴するが、現在の経済システムは陽的な要素を推進する法定通貨のみで動いているために陰陽のバランスを欠いた社会になっており、その欠けた陰を補完するのが補完通貨の役割であるという。

その後、欧米での歴史的事例の発表が行われた。フランス・リヨン大学のジェローム・ブラン氏は、地域通貨は地方自治体・市民団体・地場企業・銀行などが地域経済の活性化や自律的な発展のために発行し、フランスやドイツでは近代化が始まった当時は各地の銀行がそれぞれ通貨を発行していた点や、19世紀から20世紀にかけてさまざまな実践があったことを明らかにした。また、米国オクラホマ中央大学のローレン・ガッチュ氏は、大恐慌のさなかの1930年代に米国でも地方自治体や企業などがさまざまな地域通貨を発行した点に触れた上で、あくまでも各個人や企業の自己利益の道具として地域通貨を設計する必要性を強調した。

次に、「地域」の枠組みに関する発表が行われた。英国ロンドン大学のロジャー・リー氏は、経済は国家単位ではなく「圏」単位で運営されているという観点から、昨今のグローバル化によって伝統的な「圏」が危機にさらされているため、地域限定の地域通貨によって「圏」を作ることの重要性を述べた。次にウィーン大学のロバート・ムージル氏がネットワーク論の観点から地域の考察を行い、豊かな地域が貧しい地域を支配しがちな現状を紹介した上で、地域のたすけあい活動から金融活動に至るさまざまな地域活動に対してさまざまな地域通貨が必要とされている点を述べた。さらに、夕食後には英国ウォーウィック大学のナイジェル・スリフト氏が、現代社会がますます金融資本の論理で動かされている現状を述べた上で、より社会面や地域発展などの側面に考慮した金融制度の必要性を述べた。

2日目は、ベルリン工科大学のマーティナ・シェーファー女史が、ドイツでここ4年ほどの間に広がりつつある「地方通貨」(REGIO)という試みに関する発表を行った。日本では一般的に地域のふれあい作りの手段として地域通貨が認識されている傾向があるが、それだけでなく地産地消型経済の構築やNPO活動の推進などの目的も達成するする道具としてREGIOが使われていることや、REGIOの成功のために必要ないくつかのポイントも紹介された。その後米国・アイオワ州ドート大学のジョナサン・ワーナー氏が米国における最近の地域通貨運動について紹介した。

その後、いわゆる主流派の経済学者による地域通貨分析も紹介された。まずドイツ・コットブス工科大学のウォルフガング・セザンヌ氏がマクロ経済学的な観点から地域通貨や、シルビオ・ゲゼル(1862-1930)の提唱した「減価する貨幣」に関する考察を発表した。その後同じくドイツはレーゲンスブルク大学のゲアハルト・レースル氏(ドイツ連邦銀行での勤務経験あり)がドイツの地域通貨の現状分析を行った。レースル氏自体は地域通貨の有効性に関しては懐疑的な立場ではあるものの、中央銀行の元職員として地域通貨の積極的な活用には賛成している点を述べた。さらにオルデンブルク大学のヘンイング・オスマース氏が、地域通貨の導入によってどのように通貨政策が影響を受けるかという点を述べた。

午後には、世界各地の地域通貨の実践例が紹介された。まず、イギリス・リバプール大学のピーター・ノース氏が、ハンガリーでの地域通貨運動の特徴を紹介した。次に韓国・大田大学校の千京煕女史が、大田市で活動中のハンバンLETSなど韓国の地域通貨情勢についてプレゼンを行った。また、イギリスのイースト・アングリア大学のジル・セイファン女史は、イギリス各地で運営されているタイムバンク(日本の「ふれあい切符」に似た制度)が、LETSと相互補完的な関係にあることを紹介した。

最後のセッションでは、オランダのNGOストロハルム財団の職員として地域通貨の普及に取り組んでいるスティーブン・ドミリオネア氏が、東南アジアや中南米など発展途上国での地域通貨の事例について紹介した。その後バーバラ・ロッスマイスル女史がアルゼンチンのRGTに関する分析を発表した。そしてアルゼンチン・ブエノスアイレスのエロイサ・プリマベーラ女史が、アルゼンチンやブラジルなどで取り組まれている「コリブリ・プロジェクト」と呼ばれる地域開発プロジェクトについて講演を行った。

今回私が強く感じた点としては、現在われわれが直面している社会的・経済的問題と現在の通貨制度が大きく関連しており、だからこそそれを克服するために地域通貨など通貨制度を創出する必要があるという意識が、参加者すべてに共有されていた点である。今回の会議の内容については近日中にまとめられてホームページや出版物として英語やドイツ語で公開される予定である。