Archive for the ‘実践例’ Category

連帯経済紹介ビデオ(日本語字幕つき)

3月 7, 2011

2006年にブラジルで公開された連帯経済の紹介ビデオに、日本語字幕を入れてみた。

ビデオ画面のすぐ下にあるCCにポインタを当てると言語選択ができるので、ここで日本語を選択すると日本語字幕で視聴できる。とりあえず「連帯経済って何?」という疑問に答えるビデオとなっているので、ぜひご覧あれ。

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WIR銀行: 中小企業を助けるスイスの実践例

6月 3, 2006

地域通貨などの取組は実業界とは関係ないと誤解している人がいるが、スイスで1934年に創設されたWIR銀行(ドイツ語・フランス語・イタリア語)は、WIR(ドイツ語で「私たち」の意味)と呼ばれる補完通貨で低利融資を提供することで中小企業を助けている。

この銀行が創設されたのは、まさにスイスが大恐慌の影響に苦しんでいる時期であった。ゲゼルの「自由貨幣」の理論を知っていた人たちが集まり決済組合を作ったが、これが後に協同組合銀行となる。スイスフラン(CHF)の流通が不十分だったことから、CHFではなくWIRが交換手段として使われた。WIR銀行は1948年にゲゼルが提唱した減価を注視したが、現在でもスイスの中小企業間での取引を手助けしている。

この銀行の会員になれるのは、基本的に中小企業だけだ。彼らはCHFと並行してCHFと同価のWIRを、他の会員企業との取引で使う(たとえばWIR30+CHF70)。また、WIR建てだとCHF建てよりも低利で融資を受けられるが、それはWIRはWIR銀行自らが創造できるのに対し、CHFの場合は公定歩合を負担しなければならないからだ。こうして、たとえば公定歩合が3%の場合、WIRでは2%、CHFでは5%の利率になるわけだ。

他にも、WIR銀行の会員になることで顧客が増えるというメリットもある。WIRは非会員(大企業や外国企業)には使えないため、WIR銀行の会員は他の企業を引きつけることができる。こうして自分たちの購買力が国境外へと流出することを防げるのだ。

ある調査(英語)によると、WIR銀行は景気変動を調節し、従来の経済を補完する役割があるという(次回紹介)。WIR銀行の会員は不況時にはWIRでの取引を増やす一方、好況時にはWIRでの取引を減らすため、不況をそれほど恐れる心配がなくなる。70年以上の歴史から学べることはたくさんあることだろう。

WIR銀行についての本(英語)

ドイツのキームガウアー: 地域経済の自律性を取り戻す新通貨

5月 16, 2006

大多数の人を犠牲にして少数の人だけを豊かにするグローバル化によって数多くの対抗運動が出現してきたが、その中でも慧眼な人は別の通貨システムで現行の社会経済システムを根本的に変革できる可能性があることに気づいている。今回は前回紹介した1930年代の素晴らしい実験が行われた場所からそれほど遠くない小さな町の興味深い取り組みをご紹介したい。

ミュンヘンから80キロ東にあるプリーン・アム・キームゼーは、数多くの人がキーム湖で夏の休暇を過ごすバイエルンでも有数の行楽地だ。ゲゼルや ヴェルグルなどを学び、この地で高校教師をしていたクリスティアン・ゲレーリは、2002年の秋に地域通貨を運営するプログラムを考え付いた。6人の女子 生徒が参加に興味を示し、キームガウアーのプロジェクトが翌年1月に始まった。

このシステムはNPO・一般市民・地元企業の間で誰もが得する関係の構築を目的として計画された。それぞれが以下のようなメリットを享受し、この交換手段が地産地消を促進する。

* NPO: 100キームガウアー(=€100)を€97で仕入れ、一般市民に€100で販売するため、儲けとなる€3を自分たちの活動費に充当できる。
* 一般市民: €100で100キームガウアーを買い入れ、額面価格のままで地元商店に支払うため、追加支出なしで地元のNPOに消費額の3%を寄付できる。
* 地元企業: 受け取った100キームガウアーを他の地元企業への支払いに使うか、5%の手数料を負担して€95に両替する。5%の手数料は広告費とみなされ、これにより地域貢献を望む消費者をひきつけることができる。
* キームガウアー事務局: 100キームガウアーを€97で売り、€95で再交換する。差額の€2は運営費に充当される。

利用者やキームガウアーでの地元企業の売上額は右肩上がりを続けてきた。現在では700人の市民と380もの地元企業がこのシステムに参加し、年間で72万キームガウアーもの売上を記録している(詳細はこちらで)。ICカードの導入によりさらなる成長が期待されているこのシステムは、ドイツ国内外の注目を集めている。

オーストリアで地域経済を復活させた地域通貨

5月 9, 2006

ゲゼルの減価理論はたいてい、オーストリアのヴェルグルという町で大恐慌の時代に実践された成功例とともに語られる。今回はこのティロル地方の町で、この通貨システムがどのように地域経済の回復に一役買ったかを紹介したい。

この小さな町は当時、他の町同様不況に喘いでいた。1932年春にはわずか人口4216人の町で350人が失業しており、そのうち200人以上は失 業保険も切れていた。税収も減り、町役場も破産の危機にあった。そこで町長であったミヒャエル・ウンターグッゲンバーガーはこの苦境から脱出するために、 1932年7月に地域通貨として「労働証明書」の発行を決断した。

1・5・10シリングの労働証明書が印刷され、町役場から建設労働者に賃金として支払われた。各紙幣は月末になると有効期限を迎え、それを再度有効 にするには額面金額の100分の1のスタンプが必要であった。つまり、たとえば1000円の労働証明書を今日(5月9日)に受け取ったとすると、この紙幣 は5月31日までしか有効ではなく、今月中にこの紙幣を使いきれなかった場合には10円のスタンプを買って貼らなければならない。そのためこのお札を受け 取った人間はこのお札を手元に置いておくのではなく使うことを推奨され、これによりヴェルグルの経済活動が息を吹き返した。平均でわずか5490シリング の通貨供給で250万シリング以上の取引がわずか1年あまりの間に起こり、町役場はこのお札のおかげで公共事業に10万シリング以上支出ができるようにな り、また失業も4分の1減った。さらに税金の前払いを申し出る人さえ出るほど(いくら十分に収入があっても、あなたならそうするだろうか?)みんなが豊か になったのだ。

だが、この並行通貨のブームはウィーンの中央当局を震え上がらせ、ヴェルグルはこの素晴らしい通貨の流通を1933年9月に中止せざるを得なかった。とはいえこの成功はさまざまなメディアに取り上げられ、ゲゼルの理論の有効性を証明している。現在ではウンターグッゲンバーガー研究所が関連資料の収集の他、地元でのI-motionプロジェクトの推進を行っており、ドイツで”Regio”(地方通貨、次回紹介)の実践者の訪問を数多く受けている。

倫理銀行: 社会や環境にやさしい事業への銀行

4月 22, 2006

このブログは、ユートピア的な空想とも思える私の理論的枠組みを長々と論じるだけの場所ではない。このウェブスペースでは、経済の民主化への道を示唆しているように思われる現実の事例についても紹介してゆき、私の考えが実現不可能ではないことを示してゆく。

1999年にイタリアのパドヴァ市で開業した倫理銀行(Banca Etica)は、社会や環境のためになる事業に投資する好例である。すでに2万人以上の会員から4億ユーロ以上を集め、1700以上の事業に融資している。

http://www.bancaetica.com/(イタリア語・英語・フランス語)

この銀行は、従来の銀行では満足できなかったNPOや協同組合などの関係者などが集まって作られた(詳細については前回の記事を参照)。預金者は自分の預金の用途として、4つの分野(社会協力 / 環境保護事業 / 発展途上国支援 / 文化活動)のうちいずれかを選択でき、銀行は対象者の返済能力に加え、事業の社会面・環境面での影響も審査して融資の是非を決める。以下は、この銀行が融資した事業の一例である。

– ホンジュラスのコーヒー生産協同組合とのフェアトレード

– 南イタリア・リアーチェの歴史的街並みの再生

– ベネディクト派修道院による有機農場

– 地下経済への依存脱却のための有機農業

– 薬物中毒患者への支援

– 売春婦向けの健康サポート

– アルバニアへの経済支援

この銀行のもう一つの特徴として、実際には代表者を通じた間接的な形ではあるものの、協同組合であるこの金融機関を預金者が運営していることが挙げられる。有志に関する全情報への透明性が確保され、倫理銀行関係者なら誰でも経営の実情が把握できる。倫理銀行からの収益は他の民間銀行ほど高くないかもしれないが、自分のお金が実現していること(社会や自然への貢献)に誇りを持つことができる。悪い話ではないと思うが、いかがだろうか。