Archive for the ‘通貨理論’ Category

開かれた通貨宣言

5月 22, 2006

現在の社会の基盤として、民主主義や人権、自由などの概念がある。これらの価値を抑圧する人は国際社会から非難される危険を冒す一方で、NGOなどの擁護者は世界中から支援を得られる可能性がある。

開かれた通貨宣言は、現代社会の業績を経済分野に応用したものである。1948年に国連で採択された世界人権宣言からの引用に始まり、現在の通貨システムの正統性について疑問を投げかけている。

  • 非民主的な管理: お金は誰もが必要な道具であるが、現在このお金は民間銀行が管理しており、誰が融資を受けられ事業を始められるかは銀行次第である。
  • 高価: お金の借り手は元金に加え複利を負担する必要がある一方で、利益は限られた人間だけが掌中にする。
  • 退蔵可能: お金の所有者はお金を好きな期間退蔵ができるが、これによりお金の流通が阻害され、本当に必要な人が迷惑を受ける。
  • 不公平: 複利の存在により、大多数の貧しい人を犠牲にして豊かな人の資産が増えてゆく(詳細はケネディを参照)
  • 持続不可能: 永遠に指数関数的な成長を要求する現在の通貨システムは遅かれ早かれ破綻する運命にある

簡単にいうと、われわれの通貨システムは非民主的で、人権や自由を考慮していないわけだ。

通貨システムは自然法則ではなく合意事項であり、これは人間のニーズに合わせて作成され、今でも改編可能であることに留意されたい。われわれの交換手段がわれわれの価値のためになるようにするためには、通貨システムを改編する必要があるわけだ。

デマレージ(持ち越し費用)、あるいはマイナス利子とは?

5月 4, 2006

ここまでの説明で、現在のプラス利子に立脚した通貨システムこそが持続可能なライフスタイルや経済活動にとって大きな障害になっていることがわかるだろう。ドイツ出身でアルゼンチンで財を成した実業家・経済学者のシルビオ・ゲゼル(1862-1930)は、その代表作「自然的経済秩序」でこの枠組みを変える方法を提示している。

彼の議論は、他の商品に比べてお金が有利な地位になるという事実から始まる。一般的に商品は時間の経過とともに減価し、たとえば昨日の新聞や去年の リンゴは売れないのに対し、お金の場合には損失を被ることなく好きなだけ保存することができ(インフレがなければの場合だが: この本が書かれたときにはドイツは金本位制だったことに留意されたい)、お金を必要としている人に融資するときに紙幣の所有者は複利を請求できる。この融 資では手持ち金が多ければそれだけ利益も多くなり、大富豪はこれにより利子だけで生活ができるようになるのに対し、多くの貧者は金持ちへの利払いを余儀な くされるのだ。

ではゲゼルの考え方とは?: 「お金の特権の廃止」である。経済的価値の保存の場合には商品よりも通貨が好まれるのはお金の価値が不変であるためなので、彼はお金の退蔵を防ぐために定 期的に「デマレージ(持ち越し費用)」を紙幣の所有者から徴収することを思いついたのだ(たとえば額面価格の100分の1のスタンプを毎月貼る: 詳細は次回)。

これにより金融システムが根本的に変わり、債務者に有利になる。資産を増やすよりもむしろデマレージによる貨幣価値の下落の回避の手段として債権者 は融資を行い、このデマレージの率が十分に高ければマイナス利子の融資も可能となる。たとえばデマレージが月1%(1年だと約11.4%)の場合、手許に 1000ドルを1年間置いておいて100ドル以上損するぐらいなら、950ドルしか戻ってこなくても貸したほうがましになるのだ。マイナス利子の結果、こ れまで低利回りのために融資を受けられなかった事業にもチャンスが回ってきて、融資=好きな事業を営む自由を受けられる人が増え、その結果経済運営がより 民主的になるのだ。

ゲゼル自身は自分の理論の応用例を目の当たりにすることなく1930年に没したが、その後の歴史が彼の正しさを証明している。次回は歴史的成功例について紹介したい。

利率と長期的な事業

5月 1, 2006

現在の複利は前回の記事で書いた現象だけでなく、短期的な事業に資金を意図的に投入する一方で、長期的な事業がなかなか十分な融資を受けられなくなっている。この問題に取り組んでいるドイツ人研究者シュテファン・ブルンフーバーは、著書“Wie wir wirtschaften werden”(英語版は「Our Future Economy」という題名で刊行予定)でこの問題をわかりやすく説明している。

以下の2つの事業のうち1つに投資ができる場合、あなたはどちらに投資するだろうか。

a) 10年後に€100になる€10の松の木

b) 100年後に€1000になる€10のクヌギの木

ほとんどの人は気づいていないが、利率がここで決定的な影響を持つ。将来成長する資産は過去においては小さくなるため、プラス利率は将来の資産の評 価減と同義だ。利息が年5%だとすると、2006年現在の€1000は2016年の€1628.89(1000×1.05^10)と同価値になるが、逆に 言うと2016年に€1000になるものは2006年現在では€613.91(1000/1.05^10)まで減額してしまう。この観点では松の木の現在 価値は€61.39であるのに対し、クヌギの木はわずか€7.60(1000/1.05^100)でしかなく、誰もが松の木を植える一方でクヌギの木には 誰も関心を示さなくなる。

これにより、手っ取り早く利益が期待できる中国になぜ実業家が先を争うように工場を建設するかがわかる。植林や教育など長期的な事業はこの枠組みでは儲からないため、実業界が関心を持ってもらえる可能性は低い。

だが、利率さえ変わればこの枠組みが根本的に変わる。マイナス利子になれば、将来の資産の評価が減るどころか増えることになる。利率がマイナス5% の場合、松の木の現在価格は€ 61.39ではなく€162.89に、クヌギの木は€ 7.60ではなく€131,501.26になるのだ。これにより長期的な事業や安定して利益を出す事業が有利になり、資金提供を受けられる事業が増える。

しかし、どうやればマイナス利子が可能になるのか。次回はこの問題を取り扱いたい。

現在の通貨システムは持続可能か?

4月 26, 2006

今では持続可能性の問題に関心を持つ人が増えているが、この概念を通貨の領域に応用しようという試みがほとんどないのは奇妙な話だ。どの国の経済に 対しても通貨危機が非常に深刻な影響を与えることは世界各地で起こった事例(1997年のアジア、1998年のロシア、2002年のアルゼンチンなど)を 見ると明らかだが、持続可能な通貨制度の構築について金融アナリストが激論を展開している様子は私には想像しにくい。

ドイツの建築家マルグリット・ケネディ(ド イツ語・英語)は、この問題に答えを出そうと試みた人の一人である。彼女は自分が取り組んでいた環境にやさしい建築には現在の通貨システムは都合が悪いこ とを発見し、経済システムを通貨面から研究し始め、いくつかの構造的な欠陥があるという結論に達した。以下、彼女の主要著作「インフレとも金利とも無縁な お金」(ドイツ語英語日本語抄訳)での主要点を紹介する。

1. 指数関数的な成長(ドイツ語英語

複利によって現在の通貨システムは、経済が永遠に、しかも加速度的に成長することを要求している。だがこれは自然界では普通ではなく、たとえば人間 は大人になれば物理的な成長に終止符が打たれるが、指数関数的なカーブの場合、ちょうどガン細胞が成長を速めて体全体を食い尽くすように、天然資源や労働 力を使い尽くして破滅する運命にあるのだ。

2. 金利負担はどの事業にとっても大きな負担(ドイツ語英語

借金の返済時だけでなく、商品やサービスの支払いの際にもわれわれは金利を支払っている。たとえばバス代の一部はバス会社の利息負担に充てられてい るわけであり、ケネディの試算では平均で価格の4分の1に達する。金利のせいで環境にやさしい事業が「儲からなく」なることも少なくないことに留意された い。

3. 金利を通じた富の不公平な再分配(ドイツ語英語

だが、経済の民主化の面での利息の最重要ポイントは、これにより貧しい人から金持ちへの富の移転が起きていることだ。当然だがお金のない人は大きな 買い物(住宅や乗用車など)を購入するときにお金を借りなければならず、元金に加えて金利を支払う義務を負う一方で、ごく一部の富豪はこの状況を利用して さらに豊かになっている。ケネディによると人口の8割以上はこうして損をする一方で、一握りの大富豪がこのシステムで得をしており、このような性格の通貨 システムが社会正義の観点から許容されるべきかという疑問を投げかけている。